FAQについて何となく意味はわかっていても、Q&Aとの違いや本来の意味を理解出来ていない方が多いようです。
優れたFAQを作成するためには、FAQについて十分な理解を深める必要があるでしょう。
この記事ではFAQの必要性や作成時の注意点などを分かりやすく説明します。FAQの作成や改善を考えているのなら、ぜひこの記事を参考にしてください。
FAQとは
FAQは「エフ・エー・キュー」と読み、正式名称は英語で「Frequently Asked Questions」と書きます。日本語の意味は「頻繁に尋ねられる質問」です。
言葉自体の意味は「質問」に特化していますが、実際にはその質問に対する回答も含めてFAQと呼ばれています。
企業の商品やサービスに対してよく利用されているため、目にしたことがある方も多いでしょう。
FAQとQ&Aの違い
FAQと似た言葉としてQ&Aという言葉がありますが、厳密には両者の意味には違いがあります。
先ほど紹介したようにFAQが「Frequently Asked Questions」=「頻繁に尋ねられる質問」であることに対し、Q&Aは「Question and Answer」=「質問と答え」という意味を持っており、「頻繁に尋ねられる」つまり「よくある」という部分がありません。
分かりやすく2つの違いをまとめると下記のようになります。
・FAQ=Q&Aの中でも頻繁に尋ねられる質問と回答
しかし、実際にはFAQとQ&Aの違いを厳密に分けている企業は少なく、ほとんどの場合「よくある質問と回答」として区別せず利用されています。
FAQに必要な構成要素
FAQには次の要素を含める必要があります。必要な要素が満たされていなければ、ユーザーのニーズに応えられません。
1 質問
FAQに記載する質問は、ユーザーから「頻繁に尋ねられる質問」から集めます。質問内容は簡潔にまとめて、検索に使われやすいキーワードも盛り込みましょう。
2 回答
「頻繁に尋ねられる質問」に対しての答えを分かりやすい文章を使って解説します。必要であれば画像や動画を用いて理解しやすさを重視してください。
3 参考ページへのリンク
回答に多くの情報が必要な場合や、その証拠を示したい場合には、回答自体のボリュームを増やすのではなく参考ページのURLを設置しましょう。
回答が長すぎるFAQは、ユーザーに「読みにくい」と感じられてしまいます。
4 関連するFAQ
多くの場合、関連する質問を参照することでより理解が深められます。関連するFAQを用意することで、ユーザーは何度も質問を検索する手間が省けるでしょう。
例えば「パスワードもIDも間違っていないのにログイン出来ない時」というキーワードを検索しているユーザーは「パスワードやIDを忘れてしまった時の対処法」や「パスワードやIDの変更方法」なども同じタイミングで検索する可能性が高いです。
FAQの種類
FAQには大きく分けて顧客向け・社内向け・コールセンター向けの3つの種類があり、それぞれで想定されるユーザーが変わります。
種類1 顧客向け
最も一般的なFAQと言えるのが、顧客向けのFAQです。企業のサービスや商品はもちろん、企業に対して顧客が感じることの多い質問・疑問に答えるために存在し、一般的に公式サイトやECサイトに設置されます。
顧客はこのFAQを活用することで、問い合わせをすることなく問題を解決することが可能なため、顧客満足度の向上が期待出来ます。また、カスタマーサポートに集まる問い合わせ件数を減らして、その負担を軽減します。
種類2 社内向け
社内向けのFAQは社内のシステム・ルールについて社員からよくある質問をまとめたもので、総務や情報システム部の負担を減らして業務を効率化させます。
社員が自分で問題を解決出来るようになれば、企業全体で業務をスムーズに進められるでしょう。情報が共有されやすくなることで、業務の属人化も防げます。
種類3 コールセンター向け
コールセンターには顧客から毎日多種多様の問い合わせが集まりますが、オペレーターは顧客を待たせずに正しい回答をしなくてはいけません。
様々な問い合わせにすぐに適切な回答をするためには、FAQが欠かせません。FAQがあれば、顧客からの問い合わせに適した回答を、瞬時に検索して探すことができるためです。
FAQがなければ経験豊富なオペレーターしか業務を遂行出来なくなってしまうでしょう。また個人的に持っている情報を元に回答をすると、思い違いや古い情報を顧客に伝えてしまう恐れがあります。
コールセンター向けのFAQがあれば、統一された情報で質の高いカスタマーサポートが行えるのです。
FAQを作成するメリット
FAQを導入することによって、多くのメリットが得られます。ここではFAQを作成するメリットについて説明しましょう。
メリット1 質問に対する回答を統一出来る
顧客から質問を受けた時に担当者によって返答や対応が変わるような状態では、顧客の信頼を失ってしまいます。「情報共有が出来ていない会社」「担当者次第で対応が変わる会社」というネガティブな印象を持たれてしまうでしょう。
FAQによって質問に対する回答が統一されていれば、経験の浅い担当者でもベテランの担当者と同じ返答と対応が出来るのです。
メリット2 質問を受ける部署の負担を軽減する
FAQがなければ、質問を受ける担当部署は何度も同じ質問に対応しなくてはいけません。特にカスタマーセンターでは同じ質問に対応するための人員も必要になるでしょう。
よくある質問はFAQに任せ、イレギュラーな質問に注力すれば、顧客を待たせるという問題が発生しにくくなります。また、社内向けのFAQであっても、質問を受け付ける総務などの部署の負担を軽減することができ、他の業務に集中出来る環境が作れます。
メリット3 オペレーターの育成と定着
カスタマーセンターには多くのオペレーターが必要ですが、その業務負担が重すぎたり、覚えるべき情報量が多すぎたりする職場は離職率が上がります。
人材育成には時間と手間がかかるため、言葉遣いや業務知識など身につけることが多いオペレーターは、特に離職率を低く抑えたいと企業側も考えるでしょう。
FAQによってオペレーターの負担が軽くなれば、働きやすい環境が構築されて離職率を下げられ、新しいオペレーターも育ちやすくなるでしょう。
メリット4 顧客満足度の向上
購入したサービスや商品に疑問点がある時やトラブルが発生した時に、問い合わせをしても電話が繋がらなかったら、顧客満足度が下がる要因になります。また問い合わせ自体に手間を感じる顧客も多いです。
FAQでよくある質問に対する回答が用意されていれば、問い合わせる手間なく、顧客は自分の力で問題を解決出来ます。
また、カスタマーセンターへの問い合わせ数が減少すれば、問い合わせをしたいのに繋がらないという事態も防げるため、顧客を待たせることが無くなるという意味でも顧客満足度の向上につながります。
メリット5 顧客のニーズが把握出来る
FAQ作成後にその閲覧履歴を分析すれば、顧客がどのようなニーズを持っているのかが理解出来ます。よく質問される内容に原因があるのであれば、解決することがベストです。
例えば「ユーザー情報の更新方法」がよく検索されている場合は、該当のページが顧客からは把握しにくい場所に設置されている可能性が考えられますし、商品の取り扱い・トラブルに関しての質問が多い場合には商品そのものの品質改善に取り組むべきでしょう。
FAQの作成前に行っておくべき準備
FAQを作成する前には行うべき準備があります。これらの準備に漏れがないように注意してください。
準備1 FAQの導入目的を明らかにする
何となく他社を参考にFAQを導入してみたところで、解決するべき問題や期待する効果は分かりません。
まずは先ほどお伝えしたFAQの種類(顧客向け・社内向け・コールセンター向け)のうちどのFAQが必要であるかを考え、何のためにFAQを導入するのかを明らかにしてください。
FAQを利用する対象者が変わればFAQに盛り込むべき質問やその情報の難易度が変わります。作成したFAQが利用されるタイミングも考えて十分な検討が必要でしょう。
準備2 FAQの担当者を決める
FAQは定期的な見直しや改善が必要であり、導入後も継続して管理を続けなければいけません。そのためFAQの作成だけでなく管理をする担当者・担当部署を決めておきましょう。
同時に運用フローも作成し、複数の担当者が分業出来る状態を整えておきます。
準備3 FAQの作成方法を決定する
一般的にFAQはFAQ機能がある専用のシステムやツールを使って作成されます。もちろんシステムなどを活用しないという方法もありますが、専用のシステムを使うことで効率良くFAQを作成・公開・管理出来るのです。
自社が求めている機能が搭載されたシステムをいくつか選定し、可能であればトライアルをした上で一つのシステムに絞りましょう。FAQシステムの中には、ただFAQを作成するだけでなく分析機能やレポート機能が搭載されているものも多いです。
FAQの作り方の手順
次に、FAQの作り方を具体的に説明します。前の章を参考にしっかり準備を整えた上でFAQ作成を進めましょう。
手順1 FAQに記載する質問を選定していく
FAQによくある質問がまとまっていなければ、FAQ導入の効果が得られません。顧客向けやコールセンター向けのFAQであればカスタマーサポートに集まった情報を参照し、社内向けのFAQなら社員から多い問い合わせを明らかにしていきましょう。
これまでの問い合わせをデータ化している企業なら、この工程はスムーズに進められます。
手順2 質問に対する回答を用意する
選定した質問に対して適切な回答を用意します。回答は簡潔で分かりやすいものでなくてはいけません。
社内に散らばっている情報を集めて最適な回答を見つける必要があるため、多くの部署の意見を聞きながら話を進めてください。
手順3 質問をカテゴリ別に分類する
FAQの質問と回答が整ったら、ユーザーが使いやすいようにカテゴリ分けしていきます。せっかくFAQを用意しても、ユーザーが必要な情報を見つけられないのでは意味がないのです。
段階的にカテゴリを分けて検索性を高めれば、欲しい情報がすぐに手に入りやすくなります。
手順4 完成したFAQを公開・分析する
FAQが完成したら関係部署の確認をとった上で公開します。ユーザーが気付きやすい場所にFAQを設置してFAQ自体の認知度を高めてください。
FAQを公開後、アクセスデータを解析して必要な改善を行います。閲覧数の多い質問はより目立つ場所に設置したり、閲覧数の少ない質問はキーワードを見直したりするなどの取り組みが有効です。
新機能が追加された場合などには同時にFAQの情報も改め、常に最新の情報を提示します。
FAQを作成する際のポイント
質の高いFAQを作るためには、FAQ作成時に次のようなポイントを意識すると良いでしょう。
ポイント1 ユーザーのニーズに応える
FAQは実際にFAQを利用するユーザーのニーズに応えられるものである必要があります。
例えばユーザーが求めている質問が掲載されていなかったり、質問に対する回答が的確でなかったりする状態では、FAQの存在意義がなくなってしまうのです。このようなFAQはユーザーに利用される機会も減っていきます。
FAQを作る時には、ユーザーが何を求めているのかを事前に十分に調査してください。
ポイント2 簡潔で伝わりやすい回答を用意する
FAQはユーザーが自分の力で手軽に問題を解決するためにあります。そのため、専門用語ばかりを使った回答やボリュームの多すぎる回答はFAQの回答に適していません。
どうすれば質問に対する答えを的確に伝えられるのかを考え、必要な時には画像や動画も導入すると良いでしょう。より多くの情報を伝えたいという場合は、文章量を増やすのではなく参考URLを活用してください。
ポイント3 公開して終わりにしない
改善や更新をしないFAQは、情報が古くなり問題が解決できなくなったり、ユーザーニーズの変化に対応できなくなったりします。FAQは更新していく必要があるものです。
いつでも最新の情報をユーザーに提供出来るようにしてください。
閲覧データなどを参考に定期的に内容を見直せば、FAQの質がより高いものになります。
ポイント4 ユーザーの使い勝手を考える
目立たない場所に設置されていたり、検索性が低かったりするFAQは、ユーザーに活用されません。
社内向けのFAQであれば全社員が使う社内ポータル、顧客向けのFAQであれば公式サイトや ECサイトなど、ユーザーの目につく場所にFAQを設置してください。
検索性を高めるためには、質問・回答のカテゴリや見出しを工夫するなどの取り組みが有効ですが、検索機能に優れたFAQシステムを導入することも有効です。
ポイント5 FAQ以外の窓口も用意する
多くの導入メリットがあるFAQですが、必ずしも全ての問い合わせに答えられるわけではありません。FAQはよくある問い合わせに対する回答なので難易度の高い回答やイレギュラーなトラブルへの対応は難しいのです。
FAQで解決出来ない時に利用可能な問い合わせ窓口を用意し、その導線を分かりやすいものにしましょう。具体的にはFAQの最後に「問題が解決出来ない時はコチラ」のようなリンクを作り、リンク先に電話窓口や問い合わせフォームを設置すると良いです。
まとめ
FAQの導入は顧客満足度を向上させ、業務効率化やコスト削減にもつながる取り組みです。ただしユーザーニーズを理解したものでなくては、期待する効果は得られません。FAQの内容はもちろん、使い勝手にも注目し、公開後も定期的な改善を繰り返してください。
質の高いFAQを作るためにはFAQ機能のあるシステムやツールの活用がおすすめです。作成の手間だけでなく、改善や更新などの運用面でも効率的に行えるでしょう。