2020年から流行した新型コロナウイルス感染症は、中小企業を中心とした多くの事業にダメージを与えました。緊急事態宣言の発令に伴い、店舗を休業したり時短営業を実施したりした事業者も多いでしょう。多くの事業で売り上げは低迷し、資金繰りに困窮するケースも増加しました。
そこで実施されたのが、国による支援です。給付金、補助金、助成金などといった形で、個人や企業への金銭的援助が行われています。
今回注目したいのが、この給付金・補助金・助成金についてです。よくテレビでも耳にすることとなったこれらの言葉ですが、それぞれの違いは何なのでしょうか。また、どのような場合に申請が可能なのでしょうか。この記事では、給付金・補助金・助成金について詳しくご紹介します。
給付金と補助金と助成金
まずは、給付金・補助金・助成金の概要と大まかな違いについて見ていきましょう。
返済不要の国や地方公共団体による支援
給付金や補助金、助成金は、全て国や地方公共団体、民間団体などから支出されるものです。どれも申請が必要であり、給付を受けてもその返済は不要です。
ただし、誰もが給付を受けられるわけではなく、給付金や補助金、助成金の給付には要件や審査が設けられています。
また、給付金や補助金、助成金には、目的に合わせて多くの種類があります。申請時には「自分がどの給付金・補助金・助成金の対象になるのか」よく調べる必要があるでしょう。
給付金・補助金・助成金の違い
給付金・補助金・助成金の大きな違いは、「対象」と「必ず受け取れるかどうか」です。
給付金は個人を、補助金・助成金は企業を対象とした支援です。
また、給付金と助成金は、要件を満たして申請を行えば、必ず給付を受けることができます。しかし、補助金については予算が決まっており、予算の上限に達した場合には、要件を満たしていても給付を受けられないということもあります。
給付金 | 補助金 | 助成金 | |
目的 | 個人の生活や取り組みをサポートするため | 国や自治体の目指す姿に沿った事業者の取り組みをサポートするため | 事業者の雇用や研究開発活動をサポートするため |
支給対象 | 個人(個人事業主含む) | 企業 | 企業 |
特徴 | 要件を満たしていれば受け取れる | 要件を満たしても必ず受け取れるとは限らない(予算上限があるため) | 要件を満たしていれば受け取れる |
給付金・補助金・助成金それぞれのより詳しい特徴については、次章から説明していきます。
給付金とは
まずは、個人を給付対象とする給付金について詳しく掘り下げていきます。
給付金の概要
給付金とは、個人や個人事業主を対象に行われる金銭的支援策のことです。
国や地方自治体が財源を確保し、要件を満たした者が申請を行うことで、必ず受け取ることができます。
給付金の種類は多数あり、多くの対象者に活用されています。コロナ禍においては、国民一人一人に給付された特別定額給付金や減った収入を補う持続化給付金、子育て世帯を支援する給付金や住居の確保を目的とした給付金などの活用が増え、これらの給付は国民の生活を支えています。
給付金の具体例
給付金の中から、コロナ禍での申請が増えている給付金の具体例を2つご紹介しましょう。
子育て世帯生活支援特別給付金
新型コロナウイルス感染症による長期的な影響を踏まえ、低所得の子育て世帯に対し、生活の支援として支給される給付金。
・対象
①児童扶養手当受給者等(低所得のひとり親世帯)
②①以外の令和3年度分の住民税均等割が非課税の子育て世帯(その他低所得の子育て世帯)
・支給額
児童1人あたり一律5万円
(詳細は、厚生労働省のサイトを参照)
住居確保給付金
新型コロナウイルス感染症の影響に伴う収入の減少により住居を失う恐れがある方に対する、住居の確保のために支給される給付金。
・対象
①離職・廃業後2年以内の者
②給与等を得る機会が当該個人の責に帰すべき理由・当該個人の都合によらないで減少し、離職や廃業と同程度の状況にある者
・支給額
家賃額(住宅扶助特別基準額が上限)
(詳細は、厚生労働省のサイトを参照)
補助金とは
次に、主に企業を給付対象とする補助金について見ていきましょう。
補助金の概要
補助金とは、国や地方自治体の政策目標に合わせて行われる事業者向けの支援制度のことです。
新しく事業を始めたりサービスを始めたりといった事業者の取り組みをサポートするために、取り組みに必要な資金の一部を補助金という形で給付します。
補助金の申請にあたっては、以下の点に注意しておきましょう。
・審査をクリアしなければ補助金を受け取れない
・審査は事前審査と事後の検査の2度行われ、補助金の支払いは事業実施後の後払いになる
・必ず全ての経費がもらえるわけではない
補助金の給付には予算の上限や要件、審査があり、誰もが必ず受け取れるとは限りません。
さらに、補助金は原則後払いなので、事業者は新規事業やサービス導入に伴う費用を立て替える必要があります。
また、かかった経費全てが補助されるわけではなく、補助対象になる経費や割合、上限額は決まっています。事前によく確認しておくようにしましょう。
補助金の具体例
多数の補助金の中から、近年注目されている補助金の具体例を2つご紹介しましょう。
持続化補助金
小規模事業者が、経営計画に基づいて実施する販路開拓や生産性向上のための取り組みをサポートするための補助金。
・対象
常時使用する従業員が20人(商業・サービス業の場合は5人※宿泊業・娯楽業を除く)以下の法人、個人事業主の方
・支給額
50万円まで(補助率2/3)
(詳細は、経済産業省のサイトを参照)
IT導入補助金
業務効率化などのためのITツール導入をサポートするための補助金。
・対象
中小企業・小規模事業者等(飲食、宿泊、卸・小売、運輸、医療、介護、保育等のサービス業の他、製造業や建設業等も対象)
・支給額
30万円~450万円(補助率1/2または2/3)
(詳細は、経済産業省のサイトを参照)
助成金とは
最後に、補助金同様、主に企業を給付対象とする助成金について詳しく説明します。
助成金の概要
助成金とは、国や地方自治体による企業の取り組みに対する支援策です。
助成金は、大きく以下の2つに分けられます。
②研究開発関係の支援(経済産業省による)
2つのうちよく活用されているのは、①の「雇用関係の支援」です。事業者は、新規雇用や定年の延長、雇用維持、従業員の教育など、雇用に関する費用の一部について、要件を満たせば助成金のサポートを受けることができます。
一方、②の「研究開発関係の支援」のための助成金については、活用している企業がまだまだ少ないと言われています。
研究開発の継続は企業の競争力を高めるために必須ですが、「研究開発関係の支援」は「雇用関係の支援」に比べると給付額が大きく、強力なサポートとなります。積極的に活用していくべきでしょう。
助成金の具体例
多数の助成金の中から、近年注目されている具体例を2つご紹介しましょう。
雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)
経済上の事由によって事業の縮小を余儀なくされた場合において、事業主が一時的な休業や教育訓練、出向などを行い、労働者の雇用維持を図った場合に支給される助成金。事業主が支払った休業手当などの一部が助成される。
・対象
新型コロナウイルス感染症の影響を受ける事業主
・支給額
①休業手当等に対する助成率→中小企業4/5、大企業2/3(解雇等を行わない場合→中小企業9/10、大企業3/4)※上限あり
②教育訓練を実施した場合、中小企業2,400円、大企業1,800円を加算
(詳細は、厚生労働省のサイトを参照)
両立支援等助成金
新型コロナウイルス感染症の対策として、家族の介護を行う労働者に対し、育児・介護休業法に基づく介護休業とは別の有給休暇を付与し、介護しながら働ける環境づくりを行う中小企業事業主に対して支給される助成金等。
(介護離職防止支援コース)
・対象
新型コロナウイルス感染症の対策として、育児・介護休業法の介護休業とは別の有給休暇を設定するなどの取り組みを行う事業主
・支給額
介護のための有給休暇合計5日以上10日未満→20万円、合計10日以上→35万
(詳細は、厚生労働省のサイトを参照)
まとめ
給付金や補助金、助成金は、個人や個人事業主、中小企業事業主の生活の安定と積極的な取り組みをサポートする、重要な支援制度です。資金面で困ることがあっても、給付金や補助金、助成金のサポートにより解決できたという例も少なくはありません。
とはいえ、各種給付金や補助金、助成金の存在を知らなければ、給付は受けられません。どのような支援制度があり、どのような要件が定められているのか、個々が興味を持って積極的に調べていくことが大切です。
経済産業省・中小企業庁によるミラサポplusでは、各種補助金や助成金を検索することができるので、利用してみると良いでしょう。