消費者が求める商品やサービスを提供し、激しい企業間競争を生き残るために、マーケティングは必須です。近年では、マーケティングに有効な手段として、マーケティングオートメーションツールが多くの企業で活用されています。マーケティングオートメーションツールは、見込み顧客を顧客へと育成するのに有効なツールです。この働きは、企業収益に直結します。
今回は、このマーケティングオートメーションツールについて詳しくご説明しましょう。
マーケティングオートメーション(MA)とは
マーケティングオートメーションは、企業のマーケティングに欠かせないツールです。詳しく見ていきましょう。
MAとは、マーケティングの自動化ツール
マーケティングオートメーションとは、組織のマーケティング活動を自動化するツールのことを指します。企業は、顧客のニーズを掴んで価値を生み出し、売れる商品やサービスを提供するためにマーケティングを行います。マーケティングには、情報収集や分析など複雑な作業が必要ですが、マーケティングオートメーションはこの作業を自動化し、効率的で正確なマーケティングを可能にします。
MAでできること
マーケティングオートメーションでは、以下のような作業が可能になります。
①顧客情報を収集、蓄積する
顧客情報を収集・蓄積することは、マーケティングの基本です。マーケティングオートメーションを使用すれば、情報の収集・蓄積を自動で行うことができます。
BtoB企業は展示会やセミナー、メディア掲載など多様な方法で顧客情報を収集します。さまざまな形式で取得された情報を整理・管理するのは大変な作業ですが、マーケティングオートメーションなら一元管理することが可能です。細かな分類も正確に、そして速く行えます。
②見込み顧客を顧客へと育成する
マーケティングオートメーションでは、情報収集で得た見込み顧客に対し、メールなどでアプローチを行い、見込み顧客を顧客へと育成することができます。
膨大な見込み顧客一人一人に対し、人の手で適したアプローチを行うのは困難です。しかし、マーケティングオートメーションを用いれば、収集した情報をもとに、各見込み顧客に最適なアプローチを行うことが可能になります。
このようなOne to Oneのアプローチは、見込み客を顧客へと育成するのに有効で、企業の利益を拡大させます。
③データの分析
マーケティングオートメーションは、収集したデータをあらゆる面から分析することができます。例えば、見込み顧客のメール開封率やWebサイト上への訪問数、サイト上での動きなどを分析し、商品・サービスの導入検討の状況を知ることができます。
ツールならではの高い分析力と多様な分類機能を用いれば、企業はあらゆる情報を手に入れることができます。これにより、見込み顧客の求める商品・サービスを最適な方法・タイミングで営業することも可能になります。
マーケティングオートメーションが注目されている理由
マーケティングオートメーションを導入する企業は増加していますが、それはなぜなのでしょうか。
その理由は、マーケティングオートメーションの活用が企業の収益に直結するからです。具体的には以下のような点において、マーケティングオートメーションは企業間競争を優位にしています。
理由1 顧客情報・接触履歴の一元管理ができる
BtoB企業が展示会やセミナーなどで接触する見込み顧客は、膨大な人数になります。この膨大な見込み顧客を人の手で管理することは不可能です。「誰とどこで接触したか」わからずに、フォロー活動が行えず、チャンスを逃す可能性もあります。
マーケティングオートメーションを導入すれば、顧客情報や接触履歴を一元管理ができ、各顧客に適したフォローや育成が可能になり、見込み顧客の囲い込みが容易になります。
理由2 アプローチのタイミングを逃さない
マーケティングオートメーションを使用していない場合、見込み顧客の行動がわからず、最適なタイミングでの営業活動が行えません。結果、気づかない間に自社の商品やサービスが、見込み顧客の選択肢から漏れてしまう恐れがあります。
ニーズがあるにも関わらず、アプローチをしていないというリスクを払拭するために、マーケティングオートメーションは有効です。
理由3 マーケティングの生産性アップ
マーケティングを人の手で行うには、大きな手間と時間がかかります。担当者の負担は大きくなり、データの正確性も十分とは言えません。
マーケティングオートメーションを使えば、コンピューターならではの正確で速い処理で、あらゆる分析が可能です。細かな分類も、分類に沿ったメール送付も行えます。
マーケティングオートメーションによりマーケティングの生産性はアップし、正確でより幅広いデータを得られるうえ、担当者の負担も減るでしょう。
理由4 One to Oneアプローチへの注目
情報化により、顧客は日々膨大な情報に接しています。基本的な情報は自身で集めることが可能になったため、企業に求める情報提供の内容には、顧客によって違いが生まれるようになりました。また、多くの消費者が、商品やサービスの購入において顧客体験を重視するようにもなりました。
つまり、顧客は、自分だけの情報を質の高いアプローチで手にしたいと考えるようになっているのです。
そのためには、マーケティングオートメーションによる各見込み顧客のニーズや最適なアプローチタイミングの把握が必須なのです。One to Oneのアプローチが注目される中、マーケティングオートメーションは重要な役割を担っています。
マーケティングオートメーションツールの主な機能
マーケティングオートメーションツールの主要な機能としては、以下のようなものが挙げられます。
機能 | 内容 |
リード管理機能 | リード(見込み顧客)情報の一元管理を行う。 |
スコアリング機能 | 見込み顧客の行動にスコアを付け、関心度を数値化する。 |
キャンペーン管理機能 | 条件に合う見込み顧客に自動でキャンペーンを実施する(クーポン提示、ノベルティ提示等)。 |
メールマーケティング機能 | リード情報を元に、属性に応じたメールを送信する。メール開封率や配信停止率等のメール関連情報の取得。 |
アラート機能 | 見込み顧客の行動を、営業担当者に知らせる。 |
サイトのパーソナライズ機能 | Webサイトに表示される広告やコンテンツを、ユーザーによって変える。 |
レポーティング機能 | あらゆるマーケティング施作の結果をレポート化する。 |
上記は一例で、搭載機能はツールによって異なります。
また、他ツールとの連携が可能なものも多く存在し、その場合、ツール上でより多くの作業が可能になります。
マーケティングオートメーションの導入成功事例
マーケティングオートメーションツールを実際に導入した企業の成功実例を2つご紹介します。
コクヨ株式会社の事例
事務用品やオフィス家具などを手掛けるコクヨでは、3つある事業のうち、BtoB専門のファニチャー関連事業において、マーケティングオートメーションツールを導入した。
・2020年以降の景気冷え込みに備えた顧客の拡大
・顧客データを継続的に取ることが難しく、ボリュームが出せない
・ブラックボックスとなっていた見込み客の購入検討フェーズを可視化したい
・顧客データの蓄積と分析により購入検討フェーズ可視化
・ツールを通したセミナーへの誘導、見込み客の増加
・セミナー実施前後のフォローを自動化、案件化率を上げる
・セミナー招待客を3倍に増やせた
・作業効率アップ、集客が楽に
・資料請求率は40%→50%に
・新規顧客10%増、案件化率10%増
マーケティングオートメーションツールの導入により、担当者の業務負担を減らしながらの顧客の拡大に成功している。
(Marketo Engage コクヨ株式会社の導入事例 より)
株式会社 村田製作所の事例
総合電子部品メーカーとして世界的に知られる村田製作所では、新卒採用の手段としてマーケティングオートメーションツールを導入しました。以下の課題をマーケティングオートメーションツールの活用によって解決した。
・村田製作所がターゲットとする学生のエントリー数を増やすこと
・エントリーしたものの、エントリーシートを提出しないターゲット学生を減らすこと
・動画広告やSNS広告で見込み学生を獲得(学生の属性に合わせたコンテンツの出し分け)
・ターゲット学生に情報提供をする(エントリーシートの締め切り日をリマインド通知)
・エントリー数→約10%増
・エントリーシート提出数→約60%増
このようにして、村田製作所では新たな視点からツールを活用しています。マーケティングオートメーションツールは、商品やサービスの販売だけでなく、採用にも活用できることが明らかになりました。
(Marketo Engage 株式会社村田製作所の導入事例 より)
代表的なマーケティングオートメーションツールを比較
おすすめのMA(マーケティングオートメーション)ツール・サービスをこちらでご紹介します。
Salesforce Pardot
Salesforce Pardot(セールスフォース パードット)は、Salesforce 顧客向けの B2B マーケティングオートメーションソリューション。マーケティング部門と営業部門が連携して、見込み客とのすべてのやり取りを管理し、一元的な CRM プラットフォームからオンラインキャンペーンを作成、展開、管理できます。
https://www.salesforce.com/jp/products/pardot/overview/
Marketo
Marketo(マルケト)は、全世界で5000社以上が採用するMarketo Engageのマーケティングオートメーションは、デジタルからアナログまで顧客接点をカバーするマーケティングツール。お客様との良好な関係を構築し継続させるための顧客体験を設計し、新規獲得からロイヤル顧客化に至るまで、測定可能な成果を得ることができます。
マーケティングオートメーションツール運用の流れ
マーケティングオートメーションツールの導入から運用までは、以下のような流れで実施します。
- STEP1 課題を洗い出す
- マーケティング、営業における現状の課題を洗い出す。
- STEP2 ツール選定
- 「課題を解決する機能があるか」「価格や予算に合うか」「操作性に問題はないか」というポイントから、慎重にツールを比較検討し、導入ツールを選ぶ。
- STEP3 シナリオ設計
- マーケティングオートメーションをどのように活用していくか、「誰に・いつ・何を・どのように」を踏まえた具体的なシナリオ設計を行う。
- STEP4 効果の検証と改善
- 運用を始めたら、効果の検証とそれに応じた改善を続けていく。マーケティング担当と営業担当との連携が必須です。
既存課題にフィットするツール導入のためには綿密な準備が必須であり、運用までにはある程度の期間が必要でしょう。
マーケティングオートメーションツールを導入する際の注意点
マーケティングオートメーションツール導入時には、特に以下の4点に注意しましょう。
1 シナリオ設計は綿密に
ツール導入を失敗しないためには、事前のシナリオ設計を綿密に行う必要があります。
まずは、「ツールをどのようにマーケティングに活かすのか」という目的と手段を明確化し、それに合ったシナリオを設計していきます。ゴールやターゲットなど、設計すべき項目は多岐にわたりますが、自社の状況を踏まえて慎重な作業を行いましょう。
2 機能だけでなく操作性も重視
いくら多機能なツールでも、操作が複雑で使いこなせなければ意味がありません。そのため、ツール選定時には操作性にも着目することが大切です。
ただし、マーケティングオートメーションには複雑なツールが多数あります。うまく活用するためには、まず担当者の知識やスキルアップが必要でしょう。
3 人的リソースに合ったツールを選ぶ
マーケティングオートメーションの活用には、ある程度の人的リソースが必要です。リソースが不足している場合、いくらツールを導入したとしても、十分な効果は得られません。
マーケティングオートメーション導入時には、人的リソースとスキルを確保し、その規模に合ったツール選定が必要になります。
4 サポートサービスもチェック
マーケティングオートメーション導入にあたっては、ツールのサポートサービスにも注目しましょう。どのようなサポートを無料で(または有料で)受けられるのか把握しておけば、ツール運用につまづいても速やかにサポートを受けることができます。
マーケティングオートメーションのスキルが乏しい状態でサポートが薄いツールを選ぶのはNGです。できるだけ手厚いサポートサービスが受けられるツールを選べば、安心して運用を始められます。
まとめ
消費者のニーズは変化し、多様化しています。その中で企業活動を成功させるために、今後マーケティングオートメーションは必須のツールとなるでしょう。
マーケティングオートメーションツールはマーケティング業務の効率を向上させますが、業務効率化には情報共有ツールの活用も有効です。
情報共有ツールを用いれば、時間や場所に制限を受けず柔軟な形での情報共有が可能になります。マーケティングオートメーションツールによるレポート共有にも役立ちます。
ツール同士が連携できるものもあるので、マーケティングオートメーションツール導入時には、同時に情報共有ツールの導入について検討しても良いでしょう。