さまざまな企業で遂行されているプロジェクトでは、新たな製品やサービスなど、あらゆる成果物が生み出されています。そんなプロジェクトの遂行に欠かせないのが、プロジェクトマネジメントです。時代の変化に伴いプロジェクトが複雑化するにつれ、プロジェクトマネジメントの重要性は増しています。では、プロジェクトマネジメントとは具体的にどのような手法なのでしょうか。また、プロジェクトマネジメントにはどのようなスキルが必要なのでしょうか。
今回は、プロジェクトマネジメントについて詳しくご紹介します。
プロジェクトとは
プロジェクトとは、「計画事業」「研究開発計画」などと訳され、目的を遂行するための業務計画のことを指します。複数のタスクから成るプロジェクトは、各タスクを完了させていくことで進行していきます。また、プロジェクトマネジメントの知識体系をまとめたPMBOK(Project Management Body Of Knowledge)によると、プロジェクトは以下のように定義されています。
プロジェクトとは
「独自のプロダクト、サービス、所産を創造するために実施される有期性の業務である」
ここで注目したいのが、独自性と有期性です。成果物に独自性が求められること、また期限が決まっていることが、プロジェクトの大きな特徴です。
プロジェクトマネジメントとは
プロジェクトの進行に欠かせない手法に、プロジェクトマネジメントがあります。プロジェクトマネジメントは、以下のように定義されています。
プロジェクトマネジメントとは
具体的な目標や完了が定義された計画(プロジェクト)を遂行するため、人材・資金・設備・物資・スケジュールなどを調整し、各工程の進捗状況の把握や管理を行うこと。
(IT用語辞典 より)
成果物の品質やコスト、納期などを守りながらプロジェクトの目的を達成するために、調整や管理を行うのがプロジェクトマネジメントです。
プロジェクトマネジメントには高いスキルが求められ、プロジェクトマネジメントを担う人材はプロジェクトマネージャーと呼ばれます。
プロジェクトマネジメントが必要な理由
プロジェクトの成功のために、プロジェクトマネジメントは必須です。プロジェクトマネジメントには、以下のような効果を期待できるからです。
・品質、コスト、納期遵守
・無駄の削減、利益最大化
・迅速な判断が可能に
・トラブルの早期発見、対応
プロジェクトマネジメントにより計画の精度が向上すれば、無駄をなくし、コストや納期を守ることが可能になります。また、細かな部分まで計画が設定されていることでプロジェクト及び各タスクの管理はしやすくなり、判断やトラブル対応も迅速に行えるでしょう。
つまり、プロジェクトを精度高く効率的に進めるために、プロジェクトマネジメントは実施されているのです。
プロジェクトマネジメントの歴史
プロジェクトマネジメントの歴史は浅く、現在のような形になったのは数十年前です。1960年代初期から、企業はプロジェクトを中心とした作業編成に注目するようになりました。その元となったのは、第二次世界大戦中に用いられた政府や軍による複雑なプロジェクトの管理方法だったと言われています。
その後、1970年代〜1980年代にかけて企業や組織におけるITシステムの活用が急増しました。しかし、システム構築のためのマネジメント技術や方法論が未熟であったため、勘でプロジェクトが進められることが多く、多数のトラブルが発生しました。そんな中、一部のプロジェクトを成功させたプロジェクトリーダーに注目が集まり、やがてプロジェクトマネジメントの方法やプロジェクト組織の仕組みなどが研究されるようになりました。
徐々にプロジェクトマネジメントの手法が確立され、企業活動に取り入れられるようになっていきました。
(参考 Microsoft「プロジェクト管理の歴史の概要」、システム管理者の会「ＩＴ業界におけるプロジェクト・マネジメントの大まかな歴史」)
プロジェクトマネジメントを成功させるためのポイント
プロジェクトマネジメントを適切に行い、プロジェクトを成功させるためには、いくつかのポイントがあります。プロジェクトマネジメント成功のポイントを4つご紹介します。
ポイント１ 目的の明確化
プロジェクトマネジメントを進めるにあたっては、プロジェクトの目的を常に見据えておくことが大切です。目の前のタスクに追われて目的を見失ってしまうと、プロジェクトが最終目的から逸れて進んでいってしまう恐れがあるためです。
常に目的を意識するには、プロジェクトの目的を明確化しておくことが大切でしょう。
目的を明確に掲げること、そして目的とプロジェクトが乖離なく進んでいるか監視し続けることは、プロジェクトマネジメントを成功させるための重要ポイントです。
ポイント２ タスクの明確化
プロジェクトマネジメントにおいては、プロジェクトで発生するタスクを明確にしておくことも大切です。
各タスクの内容や担当者、スケジュールなどを明確化して共有すること、そしてマネージャーがメンバーに具体的な指示を出すことで、メンバーはプロジェクト完遂に向けた行動へと移ることができます。タスクを明確にするためには、WBS(作業分解構成図)を事前に作成しておくと良いでしょう。
また、タスクにおいて起こり得る課題についても事前に予想し、明確かつ具体的な対策を決めておくことが大切です。
ポイント３ 正確なスケジュール管理
スケジュール管理も、プロジェクトマネジメントの重要な要素のひとつです。プロジェクトマネージャーは、プロジェクト全体のスケジュールを踏まえた上で、各タスクの進捗管理を行わなくてはなりません。正確にスケジュール管理を行っていなければ、プロジェクトが遅延する恐れがあります。
プロジェクトには大小数多くのタスクが発生するため、それぞれのタスクとプロジェクト全体の管理を効率的に行うには、ガントチャートなどを用い、状況を見える化しておくことが有効です。
ポイント４ 丁寧なメンバーマネジメント
タスクだけでなく、メンバーのマネジメントを行うことも、プロジェクトマネジメント成功には欠かせません。タスクの進捗が遅れているメンバーをサポートしたり、相談に乗ったりと、プロジェクトのメンバーが安心してタスクをこなせる環境を、プロジェクトマネージャーは率先して整えていく必要があります。
スムーズにプロジェクトを進めるためには、プロジェクトに携わる人間関係を良好にしておくことが大切です。一方的にタスクを押し付けたり感情的に怒ったりすることは避け、プロジェクトマネージャーとしてメンバーを大事にする姿勢が求められます。
プロジェクトマネジメントの具体的な手法
プロジェクトマネジメントの具体的な手法を、「ゲーム開発」を例に見てみましょう。プロジェクトマネジメントは、以下のような流れでスタートします。
- ①プロジェクトの目的を明確にする。
- 目的:ゲーム開発
- ②プロジェクトの大きなタスクを洗い出す。
- ・プログラム作成
・キャラクター・素材作成etc. - ③②のタスクから考えられる課題を洗い出す。
- ・ゲームの内容をどうするか
・キャラクターのデザインをどうするかetc. - ④③の課題に対するタスクを洗い出す。
- 課題:ゲームの内容をどうするか
・ゲームの市場ニーズをリサーチする
・クライアントと会議をしてゲーム内容を決める - 課題:キャラクターのデザインをどうするか
・デザイナーを決める
・ゲームの世界観を決める
・キャラクターを複数用意する
・クライアントの意見をもとにデザインを決定するetc. - ⑤挙げたタスクを効率的な流れになるよう並べ替え、各スケジュールを組む。
- ⑥タスクの進捗を管理しながらプロジェクトを進めていく。
プロジェクトマネジメントでは、目的に基づき、まずは大きなタスクを挙げ、それを小さなタスクへと細分化していきます。はじめにプロジェクトを構成する全てのタスクを挙げ、効率的に並べてスケジュールを組んだ上で、プロジェクトは本格始動するのです。
この準備工程は、プロジェクトマネジメントの核とも言える部分であり、綿密な作業が求められます。
プロジェクトマネジメントに必要なスキル
プロジェクトマネジメントは、誰にでも行えるわけではありません。人とタスクをまとめ上げていくプロジェクトマネジメントには以下のようなスキルが求められます。
１ プロジェクトマネジメントの知識
プロジェクトマネジメントを行うには、プロジェクトマネジメントの専門知識が必要です。論理的なプロジェクトマネジメントの進行は、知識無しでは行えません。
プロジェクトマネージャーを目指すなら、プロジェクトマネジメントの世界基準とされるPMBOKの知識を身に付けることはもちろん、各種プロジェクトマネジメント資格にも挑戦しておくと良いでしょう。
２ マネジメント・コミュニケーション力
複数人のメンバーを伴って行うプロジェクトでは、メンバー同士の連携や状況把握が重要になります。そのために、プロジェクトマネージャーは、メンバーと活発にコミュニケーションを取りながらマネジメントを行い、プロジェクトを進めていかなければなりません。
人をうまく管理し動かすマネジメント力と、人と良好な関係を保つコミュニケーション力は、プロジェクトマネジメントを担うには必須です。
３ 視野の広さと判断力
プロジェクトマネジメントでは、各タスクだけでなく、常にプロジェクトの全体像を把握しなければなりません。目の前のタスクにばかり気を取られず、プロジェクトを俯瞰的に見られる視野の広さは、プロジェクトマネジメントを行うにあたって重要なスキルです。
また、広い視野でプロジェクトを見た上で、的確な判断を下せる判断力も、プロジェクトマネジメントには求められます。
まとめ
プロジェクトマネジメントは、プロジェクトを成功に導く手法です。仕事でプロジェクトに携わる方は、プロジェクトマネジメントに関する知識を高めておくことで、幅広い活躍が見込めるでしょう。
また、プロジェクトマネジメントには、情報共有ツールの活用が便利です。情報共有ツールでは、細やかな情報共有が可能になるだけでなく、プロジェクト管理やファイルの共同編集・保存なども行え、プロジェクトマネジメントをより円滑にします。
特にリモートワークが定番となった現在において、オンライン上で管理やコミュニケーションができる情報共有ツールは、広く活用できるでしょう。