【3分でわかる】「働き方改革」で働く環境はどう変わる?

安倍内閣により推進された「働き方改革」を元に、ここ数年で日本の労働に対する意識は大きく変化しました。働き方改革はメディアでも取り上げられ、多くの人が「一億総活躍」という言葉を耳にしたことでしょう。
とはいえ、働き方改革の内容を具体的に理解していないという人もいるのではないでしょうか。そこで今回は、働き方改革について詳しくご説明しましょう。

働き方改革とは

働き方改革とは、「労働者がそれぞれの事情やライフスタイルに合わせて、働き方を柔軟に選択できる社会」を目指し、行われた労働関連施策を指します。当時の安倍内閣の元、「一億総活躍社会」という目標を謳い、数年をかけて法改正が行われました。
働き方改革の大きな柱は、以下の2点です。

①労働時間法制の見直し
【目的】
過剰労働の防止、ワークライフバランスの実現
【施策】
・残業時間の上限規制
・勤務間インターバルの導入推進(※1)
・年次有給休暇の取得義務化(年5日)
・月60時間を超える残業に対する割増賃金の引き上げ
・労働時間の客観的な把握義務
・フレックスタイム制拡充
・高度プロフェッショナル制度創設(※2)
②雇用形態に関わらない公正な待遇の確保
【目的】
正社員と非正規社員の間にある不合理的な待遇の差を是正
【施策】
・不合理な待遇差禁止のため「均衡待遇差規定」(※3)「均等待遇差規定」(※4)を整備
・労働者への、待遇説明義務強化
・行政から事業主への助言および指導、行政ADR(※5)の整備

国内の労働においては、長年、長時間労働や雇用形態による待遇の差が問題視されてきました。そこで、働き方改革として「労働時間法制の見直し」と「公正な待遇の確保」という2つの柱を実現するため、「労働基準法」「労働安全衛生法」「労働時間等設定改善法」「パートタイム労働法」「労働契約法」「労働者派遣法」といった働き方改革関連法の改正が実施されたのです。

また、「高齢者の就業促進」も働き方改革の重要な一手として挙げられました。少子高齢化が進む日本において、高齢者は重要な労働力です。そのため、継続雇用延長や定年延長、高齢者が就業可能な求人の開拓、求人のマッチングネットワーク開設などの策を通じ、高齢者の雇用を進める仕組みづくりが行われています。

 

※1 勤務間インターバル
勤務終了後から翌日の出社時間までに、一定の休息時間を確保する仕組み。

※2 高度プロフェッショナル制度
高度な専門知識・技能を要する特定業務を行う労働者に対し、労働基準法の定める労働時間や休憩、休日、割増賃金等に関する規定を適用外とする制度。労働時間ではなく成果によって報酬が決まることで、生産性アップを計る。

※3 均衡待遇差規定
不合理な待遇差の禁止。

※4 均等待遇差規定
差別的扱いの禁止。

※5 行政ADR
裁判外紛争解決手続。労働者と事業主の間で起きた紛争について、裁判以外の方法で解決を目指す。各都道府県の労働局がサポートを行う。

働き方改革が生まれた背景と目的

労働時間と待遇差にフューチャーして実施された働き方改革ですが、その背景には近年の社会におけるさまざまな変化があります。社会的変化に応じて働き方も変化させるため、働き方改革は実施されたと考えて良いでしょう。
ここからは、働き方改革が生まれた背景および目的を4つの面からご紹介します。

1 長時間労働の深刻化

日本では長時間労働の例が多く、過労による死亡案件が発生するなど、労働時間の適正管理が以前から求められていました。長時間労働は、生産性を低下させるだけでなく、社員の健康も損ねます。そのため、今回の法改正により残業時間の上限が規定され、労働時間の管理が厳しく定められました。

2 少子高齢化による労働力人口の減少

少子高齢化が進み、労働力となる人口のさらなる減少が見込まれることも、働き方改革の背景となりました。働き方改革により環境を整備し、育児中の女性や高齢者などを労働力人口として取り入れることで、労働力の確保を目指しています。

3 働く人のニーズの多様化

近年、働く人のニーズは多様化しています。仕事だけでなく、生活も充実させたいという声が増え、柔軟な働き方の選択やワークライフバランスが重視されるようになりました。
このような働く人のニーズに応え、ワークライフバランスを実現することも、働き方改革の目的となっています。

4 中小企業を中心とした人手不足

中小企業、またはサービス業・福祉業を中心に、人手不足が深刻化しています。働き方改革は、この人手不足解消も目的のひとつに据えています。
労働時間や待遇改善による魅力ある職場づくりや生産性向上、女性や高齢者の雇用推進は人手不足打開に効果的であり、人手不足に悩む各企業の取り組みが期待されています。

働き方改革の事例

政府による働き方改革推進に伴い、各企業も実際の改革を始めています。ここでは、「日本生命保険相互会社」と「大和ハウス工業株式会社」の働き方改革事例をご紹介しましょう。

日本生命保険相互会社の働き方改革

大手生命保険会社として知られる日本生命保険相互会社は、働き方改革に伴って、以下のような施策を実施しました。

①トップを主導とした「人財価値向上プロジェクト」の実施

社長を座長とした「ワークスタイル変革」「人財育成」「ダイバーシティ推進」を目標とする取り組みを実施。「仕事の前進」と「生活の充実」との好循環を目指す。具体的には、業務削減やノー残業デーの制定、残業の管理、産業医の面談など。

②「ブラッシュアップデー休暇」取得推進

1ヶ月に1回「ブラッシュアップデー休暇」取得を推奨。有給取得状況を、人事部と所属長がフォロー。

③男性社員の育休取得率が100%に!

日本生命は女性社員が9割を占める会社であり、女性の働きやすい環境づくりの一環として男性の積極的な家事・育児参加を推進。結果、4年連続男性社員の育休取得率は100%を誇る。

④介護と仕事の両立支援

全従業員の介護への理解を深めるセミナーやボランティア活動を実施。
短時間フレックスタイム制の導入などといった制度改正とお互い様意識のある環境づくりを行うことで、介護や育児と仕事が現実的に両立できる仕組みづくりを行う。

日本生命では、多様化する働き方のニーズに応える上記のような施策を行なっています。現場の社員や介護・育児を行なっている社員といった当事者だけでなく、トップを含めた社内全体で施作の実行や理解の深化を進めているところが、会社としての働き方改革の前進に繋がっていると言えるでしょう。

大和ハウス工業株式会社の働き方改革

ハウスメーカーとして全国的に展開する大和ハウス工業株式会社では、働き方改革として以下のような施策を実施しています。

①トップ主導による長時間労働禁止

大和ハウス工業では、2003年から経営トップの元で労働時間改革に着手。労働生産性アップと働きやすい環境を目指す。
具体的な施作としては、事業所の強制的ロックアウト(閉鎖)、パソコンの強制的ロックアウト、長時間労働を行う事業所への「ブラック事業所認定」、労働時間削減に対するインセンティブなど。

②ホームホリデー制度導入

年次有給休暇取得推進の一環として、ホームホリデー制度を導入。有給取得義務化や連休の計画化、経営トップからの発信による休暇を取りやすい環境づくりなどを行う。プレミアムフライデーに基づき偶数月最終金曜日の半休を推進したり、指定日の有給取得者には手当を支給したりといった取り組みも。

③社員の意見を取り入れた制度制定を

社員一人一人の意識を変え、働き方改革を効果的に推進するため、現場社員の声を取り入れる仕組みづくりを行なっている。労働時間の実態調査や大規模アンケート、好事例の全国共有、個々への面談など。

早い段階から労働時間の改革を目指す大和ハウス工業では、長時間労働を強制的にロックアウトする仕組みが取り入れられています。付き合い残業やメリハリのない残業を防止するためにも、このような強制案は効果的でしょう。
加えて、ワークライフバランスに向けた取り組みにも力を入れています。

コロナ禍で何が変わる?

2020年の新型コロナウイルス蔓延により、人々の働き方は大きく変わりました。密を避け、なるべく人と接することのない働き方が求められるようになったためです。
コロナ禍における働き方の変化は、働き方改革の背景でもある「働く人のニーズの多様化」にも繋がります。実際、コロナウイルスの影響を受け、以下のような働き方が選択されるようになりました。

  • テレワーク・リモートワーク
  • 時差通勤
  • フレックスタイム制
  • 週休3日制

コロナ禍は経済に大きな影響を与えました。しかし一方で、このような働き方の変化により、ワークライフバランスの実現が可能になったという声も聞かれます。また、柔軟な働き方が当たり前になることで育児・介護と仕事との両立がしやすくなれば、離職していた人材が戻ってくる可能性があり、人手不足解消も期待されます。

とはいえ、アフターコロナにおける働き方には課題もあります。それは、「労働生産性の確保ができるか」「労働時間等の管理が正確にできるか」という点です。
リモートを中心とした新しい働き方でも労働生産性の確保と正確な労働管理を行うためには、マニュアル作成管理ツールや社内ナレッジツール、タスク管理ツール、コミュニケーションツールを導入するなどといったクラウドサービスの導入やインフラの整備が必要不可欠でしょう。

まとめ

働き方改革の推進に加え、新型コロナウイルスの影響もあり、人々の働き方は従来とは大きく変わっていくと予想されます。労働時間の短縮や生活の充実が図れることは、働く人々にとっては有益でしょう。
しかし、このような改革を実現しながら企業経営を続けていくためには、労働生産性の向上が必須です。新しい働き方の模索だけではなく、労働生産性を向上させるための施策を実行できるかどうかが、今後の企業の運命を左右するでしょう。