マニュアルといえば多くの企業に備わっているものですが、それを自分が一から作る…なんて考えたことはありますか?
実はマニュアルには失敗がつきもの。どうして失敗が起こるのかその解決方法はあるのか、まずはここで確認しておきましょう
失敗例1 完成しない・途中で挫折してしまう
マニュアル作成を依頼される際に「手空きの時間に進めておいて」…なんて言われることも多いようですが、この言葉は間違いなくマニュアル作成を頓挫させる危険なワードです。
冷静に考えると、業務内容は1つとは限りませんし、それぞれの業務をマニュアルとして文章化したり画像を付けたりすることは、とても「手空きの時間(片手間)」に進められるようなものではありません。
社内でマニュアル作成を依頼する場合に、通常は別の業務を行っている社員に別作業としてマニュアル作成をしてもらうということは「通常業務」+「マニュアル作成」になってしまいます。
通常業務を欠かすことはできないため、結果としてマニュアル作成は後手に回ってしまい、完成までに時間がかかってしまいます。時間がかかっても完成すれば、まだ良いですが、優先順位が低いままだといつまでたっても完成しないという事態に陥るでしょう。そうなってしまうと、マニュアルは完成しないままになってしまうのです。
解決策
マニュアルが必要で作成を始めたということは、目的があるから作成をしようとするわけです。その目的を達成するための人員ですので、片手間に進めさせるようなことがあってはいけません。
マニュアル作成に専念することが出来るような人員配置をすると良いでしょう。
失敗例2 一人で進めている&チームを組んでいない
社員一人にマニュアル作成を任せる、複数の社員に任せるがプロジェクトチームを組むわけではない…といったケースも失敗する可能性が高いです。
前述したとおり、片手間に進めることができない作業ですので、一人の力では限界があります。また、複数社員がいたとしても各々が同じ方向を向いてマニュアル作成をしなければ「ただ作っただけ」のマニュアルになってしまいます。
解決策
一人に任せきりにするのではなく、プロジェクトチームを組んでマニュアルを正確で分かりやすい内容で作成すること、内容に不備がないかなどを確認していくことが重要です。例えば、経験のある社員を部署ごとや業務ごとに1人ずつ指名して、マニュアル作成チームを作成する。1日2時間はマニュアル作成に時間を割いて、定期的に他のメンバーが作成したマニュアルの評価を行うなどすると、作成を進めやすくなりますし、見落としや不明点を見つけやすくなります。
細かいことですが、読み手のことを考えて「フォーマットを統一」することもマニュアル作成には欠かせない要素です。同じ方向を向いて作成しなければ、これすらも達成することができません。プロジェクトチームを組むことで、高品質なマニュアルを作成することができるようになるでしょう。
失敗例3 期限や目標を立てていない
しつこいようですがマニュアルは片手間に作れるようなものではないため、「急がないからやっといて」といったフワッとした指示では完成にたどり着かない可能性が高くなります。
解決策
マニュアル作成を始める前に
- 誰のために
- 何の目的で
- どんな目標があって
- いつまでに作るのか
ということをはっきりとさせておかなければなりません。例えば「来年の新入社員が半年以内に経理事務の基本を覚える」ためのマニュアルを「1ヶ月以内に作成する」など、完成までのスケジュールを決めて作成に取り組むことが大切です。
失敗例4 読みにくい
マニュアル作成に必要なポイントをきちんと押さえていない場合、読みにくく、浸透しにくいものになってしまいます。前述したようにフォーマットが統一されていないものは読みにくいですし、作成した人によって記載方法がバラバラだとわかりにくくなってしまいます。
また、文章だけでは頭に入りにくくなります。このように「読み手のことを考えて」作られていないものは、マニュアルとして成立しない場合があるのです。
解決策
しっかりとポイントを押さえてマニュアルを作りましょう。
ポイントには以下のようなものがあります。
- 5W1H(だれが・いつ・どこで・何を・なぜ・どのように)を意識して作成する
- 作業の目的や背景を明確にする
- 作業の全体像を明確にする
- 作業を具体的に記載する
- 図表や画像、動画を用いてわかりやすくする
- フォーマットを統一する
- トラブルの対処法や悪い点なども記載する
特に新入社員など右も左も分からないような人のためには、専門用語を避けたり、専門用語を使ったとしても解説を入れてあげたりするといった工夫が必要です。
また、フォーマットの統一や図表や画像、動画の挿入には「マニュアル作成ツール」がおすすめです。マニュアル作成ツールを使用すれば、誰でも同じフォーマットで作成することが可能ですし、図表や画像の挿入もパソコンから直接アップロードできます。動画の挿入も可能ですので、手順や動作などの実際の動きを確認させることもできます。
後述する「最新の状態に更新されていない」という点も、マニュアル作成ツールであればパソコン上で簡単に更新することができますし、更新したことを従業員に通知することもできます。読みやすく、常に最新のマニュアルを誰もが簡単に見ることができるようにするためにはマニュアル作成ツールの利用がおすすめです。
失敗例5 説明や構成がわかりにくい
前述したポイントにもありますが、マニュアルに記載する指示や説明は常に具体的で、1つの解釈しか出来ないように作成することが大切です。
仮に「きれいに陳列する」という抽象的な表現があったとします。「きれいに」とはどういうことなのでしょうか。このあやふやな表現によって理解することが出来ず、先輩社員などに聞きに行かなければならなくなってしまいます。また、オリジナリティ・勘違いにも繋がってしまいます。これではマニュアルとしての役目を果たしていません。このように説明がわかりにくいものはマニュアルには適していません。
また、「前回教えてなかったけど●●も覚えておいてね」といったような補足の説明や、以前の教育に後戻りしてしまうようなことをマニュアル上でやってしまうこともNGです。人が口頭で説明する場合は致し方ないですが、マニュアルでこれをやってしまうと意味がありません。
解決策
まず、マニュアル作成を進める際には構成をきちんとまとめておきましょう。そして順を追って項目を設定し、説明していきましょう。また、記載する内容は「きれいに陳列する」ではなく「商品のタグを前面に向けて、2列で陳列する」といったように、誰が見ても同じ解釈になるようにすることが重要です。
失敗例6 最新の状態に更新されていない
こちらはマニュアル完成後の話になりますが、全てのマニュアルに共通して「初版を使い続けることはできない」ということです。
たった1年前に作った内容でもそれが正しいとは限りません。作業内容に無駄があったことが判明した、取り扱い方法が変わった、お客様からのクレームや指摘が多く見直す必要があった…などマニュアルの内容は定期的に見直し改善していく必要があります。
解決策
マニュアルは定期的に改訂を行うことが大切です。マニュアルで成功している企業は月一ペースで改訂していると言います。といっても、そういった企業はマニュアル専門の部署があったりするので、必ずしもそんなハイペースで改訂することは困難でしょう。自分の企業に合ったペースで年に1回、2年に1回など定期改訂を考えましょう。
この改訂も複数部署の社員で構成したチームで行うと、互いの部署を外から見た視点で指摘し合うことができたり、改訂の疑問点などを聞くことができたりとスムーズに進めることができるでしょう。マニュアル担当者は改訂すべき点が見つかったら、定期改訂に向けてメモを取るなどしておくと見落としや漏れも少なくなるでしょう。常にマニュアルを意識しておくことが大切です。
まとめ
マニュアル作成には失敗がつきものであるということの理由がおわかりいただけたでしょうか。
作成の際には目標を定め、ポイントを押さえて、誰が見ても理解できる内容で作成することが重要です。また、作成後も定期的な見直しや改訂は必須です。マニュアルを置物のツールにするのではなく、常に使い続けることが出来る「生きたツール」にしていきましょう。