マニュアルは、多くの企業で導入されています。
しかし、マニュアルが軽視され、あまり活用されていない現場があるのも事実です。
マニュアルは、うまく活用することで多くのメリットを得られるものです。
そこで今回は、マニュアルの重要性とマニュアル化のメリット・デメリットについて詳しく解説します。
マニュアル作成の重要性
マニュアル作成は、企業にとって重要な作業です。
その2つの理由をご紹介します。
1 未経験でも業務の流れを知ることができる
新入社員や中途採用者は、当然就職した会社の業務のやり方を知りません。
そのため、既存の社員が教育することになるのが一般的ですが、既存社員も自分の仕事があるため付きっきりで教育することはできません。
そんなときに役に立つのが「マニュアル」です。
マニュアルはいわゆる「行動指示書」なので、何も知らない新入社員たちもマニュアルを読めば、ある程度仕事の全体像や業務内容を理解できるようになります。
2 業務の標準化・効率化
見よう見まねでも、仕事はできるようになります。
しかし、その仕事内容が正しいのか、また効率的に行われているのかというと、必ずしもそうとは限りません。中には効率が悪いオリジナルの方法で仕事をしている人もいるでしょう。
業務マニュアルがあれば、最も効率的に仕事を遂行する方法を標準として定め、社員全員で共有することができます。よって、全員が正しく効率の良い方法で仕事を進められます。
このように、マニュアルは企業にとってまた社員にとって、重要な意味を持ちます。
マニュアルをあまり活用していない方は、その重要性を踏まえ、今一度マニュアルを見直してみると良いでしょう。
マニュアル化に向く・向かない業務
企業にとって、マニュアルは重要性の高いものです。
しかし、全ての業務をマニュアル化すれば良いというわけではありません。業務の中には、マニュアル化に向いているものと向いていないものがあります。
マニュアル化に向いている業務
マニュアル化に向いているのは、「誰がいつ行っても同じ作業・結果が発生する業務」です。
誰もが同じように作業し、それによって同じ結果が得られる作業の場合、作業の教え方も毎回同じになります。この教える作業をマニュアル化することで、教育にかかるコストと時間を減らし、ひとりひとりの作業を均質化させることが可能です。
また、明確な判断基準がある作業もマニュアル向きです。判断基準をガイドラインとして記すことで、社員はそれをもとに業務を進めることができます。
マニュアル化に向いていない業務
マニュアル化に向いていない業務は、「ケースによって作業内容や結果が異なる業務」です。臨機応変な対応が必要となる業務では、マニュアル活用は難しい傾向にあります。
特に、接客業やクレーム対応など、人と接する業務はなかなかマニュアル通りにはいきません。規定の対応しかしていないと、相手を怒らせてしまう恐れもあります。
ただし、このような業務であっても、対応のポイントや注意点、事例、トークスクリプトなどをまとめ、マニュアルを作成しておくことは効果的です。これを参考に活用してもらうことで、社員は顧客に適切な対応を取りやすくなります。
とはいえ、このような業務では臨機応変な対応が重要です。マニュアル内には、マニュアルの内容に頼りすぎず自身で考えて適切な対応をするよう、社員への指針を示す必要もあります。
マニュアル化のメリット
次に、マニュアル化することによって生まれる6つのメリットをご紹介します。
メリット1 時間短縮
マニュアル化すると、作業フロー(作業を終わらせるまでの最適な流れ)や作業のポイントが明確になります。
マニュアルに従って作業を行うことができれば、作業の無駄やミスが減り、結果として修正や手戻りにかかる時間が減ることになります。
つまり、マニュアルに沿って正確な作業をすることで、作業時間を短縮することができるのです。
メリット2 引き継ぎがスムーズに行える
業務がマニュアル化されていれば、担当者が異動や退職、休職などで現職を離れた場合に、スムーズに引継ぎを行うことができます。
もし引継ぎ後にわからないことが発生しても、マニュアルを確認することで解決できます。
メリット3 業務品質の均一化️
マニュアル化は、業務品質の均一化を実現します。マニュアルを活用することにより、社員全員が正しく効率的な業務の進め方を把握できるためです。
マニュアルは、随時必要な情報が追加・変更されるため、必要な情報を社員全員で共有することができれば、社内の情報格差によって起こる業務品質の差を改善することも可能です。
さらには、マニュアルに判断のガイドラインや作業のポイント、トラブル対応などを記載することで、全体的なミスの削減やトラブルの早期解決も叶います。
メリット4 属人化の防止️
ある業務の内容や進め方、状況などを特定の人だけが把握しており、その人しかその業務を進められない状態を業務が「属人化」していると言います。
業務の属人化は、業務効率を低下させてしまいます。例えば、属人化した業務は担当者がいなければ進められません。担当者が休みの場合に急ぎの問い合わせが入っても、代わりの対応ができないのです。
また、属人化により特定の社員だけに仕事が偏ってしまうことも考えられます。
しかし、マニュアルを整備し活用すれば、全ての業務の内容が明らかになり、マニュアルさえ見れば誰もが全ての業務に対応できるようになります。これにより属人化が解消され、業務が標準化されれば、全体のスキルアップや業務効率化の実現が期待できます。
メリット5 早期の人材育成が可能になる️
人材育成は、企業にとって重要な使命です。新入社員に業務を教えるために先輩社員が付きっきりでOJTを行ったり、社員のスキルアップのために研修を開催したりと、人材育成に力を入れる企業は多いでしょう。
しかし、このような人材育成には手間とコストがかかります。
人材育成にマニュアルを活用すれば、その手間とコストは削減でき、早期の育成が可能になります。育成対象者が自分自身でマニュアルを見て業務についての知識を深めることで、効率的に業務内容を学習することができるためです。
また、何か不明点が発生した場合も、忙しい先輩社員や上司を捕まえて質問するよりも、マニュアルを自分で確認して解決する方が効率的です。教える人による指導内容の差も埋めることができ、教える側の負担も軽減されます。
メリット6 業務内容を見直せる️
マニュアル作成は、業務内容の根本的な見直しにも有効です。
マニュアル作成時には、現場の意見を聞きながら、作業やその手順、課題などを事細かに洗い出す必要があります。この段階で作業の無駄を省いたり、課題を解決したりしてから、正しく効率的な内容でマニュアルを作成します。
つまりマニュアル作成の過程において、業務内容を最適化することができるのです。
また、現場社員の意見を汲む中で、参考になる事例やポイントなど、経験がなくてはわからないようないわゆるナレッジやノウハウも収集できます。これを取り入れることで、マニュアルはより良いものになります。
マニュアル作成による業務内容の見直し・改善は、職場の環境や業務の質を向上させ、それらは従業員満足度や企業競争力の高めることにも繋がります。
マニュアル化のデメリット
マニュアル化には複数のメリットが期待できますが、一方でデメリットも発生する可能性があります。ここでは、マニュアル化で起こり得るデメリットを3つご紹介します。
デメリット1 マニュアル通りにしか動けなくなる
マニュアル化のデメリットとして、「マニュアル以上のことができなくなる」ということが挙げられます。全ての業務をマニュアル通りに行うことで、柔軟な対応ができなくなってしまう恐れがあるのです。
例えば、「あなたが一人でファストフード店に行ってハンバーガーを40個注文した」時に、マニュアルどおり「お召し上がりですか?お持ち帰りですか?」と店員さんに聞かれたらどうでしょうか?
店員さんからすると、これがマニュアル通りの受け答えであれば、間違いでは無いのでしょう。
しかし、一人で40個食べる方はそういないと思いますので、テイクアウトの注文である可能性が高いとすぐに判断できそうです。そうであれば「袋を分けてお入れしておきましょうか?」などと柔軟な対応をすることができたかもしれません。
マニュアルのデメリットはこのようにマニュアル通りに行うことを重視するあまり、発想力や気遣いを失ってしまうところにあります。
デメリット2 マニュアル作成に時間がかかる
マニュアルを作成すること自体に時間と労力がかかってしまうことも、大きなデメリットです。
マニュアル作成では、各部門の業務内容を把握し、業務フローの確認や注意事項をまとめ、完成後も改善を続け、社内に浸透させていかなければなりません。その手順や作業量は多く、時間と労力を要します。
マニュアル作成は大切なことですが、社内にマニュアル専門の部署を持っているような大企業で無い限り、マニュアルは従業員の誰かが作成しなければなりません。業務との兼ね合いによっては、マニュアルの作成・運用担当者の負担が大きくなってしまう可能性もあります。
デメリット3 モチベーションが下がる
マニュアルの整備は、場合によっては社員のモチベーション低下に繋がることがあります。
「マニュアル通りに動けばいい」「マニュアル通りにしなければならない」という考えにより、社員自身が考えて動く機会が減ってしまうためです。
マニュアルを守ることは重要ですが、場合によっては臨機応変な対応が必要となることもあります。また、モチベーションが低ければ、いくらマニュアルが整備されていても業務品質はなかなか上がりません。
社員のモチベーションや発案力を維持するためには、マニュアルの重要性を把握してもらうだけでなく、その改善案を募るなど、マニュアル作成・運用に積極的な関わりを持ってもらうことが大切です。
マニュアル化におすすめのツール
最後に業務のマニュアル化におすすめのツールを3つご紹介します。
1 マニュアル作成ツール
近年では、マニュアル作成に特化したツールがリリースされています。
このようなツールは、マニュアルを効率的に作成・運用できる点が魅力です。テンプレートが豊富なものが多く、ニーズに合わせて柔軟なマニュアル作成ができ、堅牢性の面でも信頼できます。
時間や手間をかけずクオリティの高いマニュアルを作成したい場合には、専用ツールの導入も検討してください。
また、専用ツールには操作性やデザインに優れ、使いやすいものも多いので、社内でのマニュアル活用を促進したい場合にもおすすめです。
2 グループウェア
社内の情報共有やコミュニケーションに役立つソフトウェアを、グループウェアと呼びます。
グループウェアにはさまざまなものがありますが、ほとんどのソフトではスケジュール管理やワークフロー、タスク管理、チャット、メモなどの複数の機能があり、これらをうまく活用することでマニュアルを共有することも可能です。
ソフトによって機能やその仕様、操作感は大きく異なるので、マニュアルとして柔軟な活用を期待する場合には、まずはトライアルなどで使用感を事前に確認するようにしてください。
3 社内Wiki
社内Wikiとは、社内で共有・運用する業務用の百科事典のようなものです。社員自ら書き込みできる点が特徴的です。
この社内Wikiをマニュアルツールとして導入し、社員が参加しながらより良いマニュアルへと変化させていくというのも、マニュアルの運用方法のひとつです。ただし、正確なマニュアル作成のためには、管理者による制御機能が必要です。
社内Wikiも、機能や仕様がツールによって異なるので、自社のニーズに合うものを選ぶようにしてください。
まとめ
マニュアルの重要性やメリット・デメリットについてご紹介しました。
マニュアルは、デメリットとなる可能性もあるものの、根本的には企業の業務効率化を実現する重要なものです。
マニュアルをあまり活用できていないという方は、今一度マニュアルのあり方と、活用方法を見直してみてはいかがでしょうか?