業務手順書の目的と効果、わかりやすい手順書作成のコツを解説

仕事は、多様な業務および作業から成り立っています。しかし、各作業を各従業員が好きなように行っていたのでは、仕事の質は下がり、効率も落ちてしまいます。そこで役立つのが「手順書」です。手順書は仕事をする上での道標となるもので、うまく活用すれば企業にとっても従業員にとっても大きなメリットとなります。では、企業にとって活用しやすい手順書はどのように作成すればいいのでしょうか。

そこで今回は、活用しやすい手順書の作り方についてご紹介します。

目次

手順書を作る目的とは?

手順書とは

まずは、手順書とはどのようなものなのか押さえておきましょう。
手順書とは、その名の通り、作業を行うための手順を記した書類のことです。作業手順書や作業標準書とも呼ばれており、従業員が正確な作業を行うために役立てられています。
手順書の特徴は、単位作業ごとに作成されることです。単位作業とは、業務を構成する個々の作業のことを指します。もし「朝食を作ること」を業務とするならば、「卵焼きを作ること」が工程、「卵を割ること」や「卵を巻くこと」が単位作業になります。
手順書には、それぞれの単位作業について以下のようなポイントを記します。

  • 作業名
  • 作業の目的、区分
  • 作業に必要な機材、道具
  • 作業手順
  • 作業についての解説、ポイント、注意事項
  • 作業についての判断基準

誰が行っても同じように作業ができる情報が、手順書に求められる内容です。そのため、手順書には、作業を行う従業員が判断に迷うことのない明確な記載が求められます。

手順書を作る目的

手順書を作る主な目的としては、「作業の均質化」や「作業の効率化」そしてこれによる「企業価値・競争力アップ」が挙げられます。

1 作業の均質化

人の手による作業は、やり方や出来上がり、作業時間に違いが出てしまいやすいのが難点です。しかし作業について細かく記された手順書に沿って作業を行えば、誰もが同じやり方、同じ質、同じ時間で作業を行うことができ、作業の均質化が叶います。

2 作業の効率化

手順書は作業の効率化にも有効です。
ある作業を初めて行う時や作業についてわからないことがある時でも、手順書があれば、人に教わる必要はありません。それぞれの従業員が個々のペースを乱さずに仕事ができるので作業は効率化され、教育のための人員コストも削減できます。

3 企業価値・競争力アップ

手順書は、各作業の情報を明確に記すことによるコーポレートガバナンスの役割も持ちます。また、手順書には社内で培われたノウハウが詰まっているため、知的財産としても有効です。コーポレートガバナンスや知的財産は企業としての価値を高めるものです。作業均質化や効率化も相まって、企業の競争力アップに手順書作成は欠かせません。

マニュアルとの違い

仕事のノウハウが記された書類には、手順書以外にも、マニュアルというものがあります。これらは混同されることが多いですが、手順書とマニュアルに記される内容は異なります。

マニュアルとは、業務についての指南書のことです。対象となる業務全般の知識や単位作業から成る業務の全体フロー、判断基準などが記されます。
先ほどの例で言う「朝食を作る」ことを業務とすると、そのマニュアルには「卵焼きを作る」「味噌汁を作る」「ご飯を炊く」などといった業務工程を記した全体フローや、「献立の内容」「作った朝食を食べる人」などといった業務知識が盛り込まれるわけですね。

マニュアルは、単位作業について記した手順書よりも大きな枠組みとなる業務を包括的にまとめたものです。つまり、マニュアルと手順書では、記載事項の範囲が異なるのです。
またマニュアルは、業務の全貌を把握して理解を深めるために有効で、手順書と同じく業務均質化や効率化、コーポレートガバナンス、知的財産の蓄積に役立ちます。

手順書の作り方

手順書は、一般的に以下のような手順で作られます。

① 手順書にする単位作業の洗い出し
フロー図や工程表を元に、業務を細分化し、単位作業を洗い出していきます。どこまでをひとつの単位作業とするのか的確な見極めを行い、単位作業の選定漏れに気をつけましょう。この作業には、現場従業員からのヒアリングも有効です。
② 記載内容の選定
洗い出した各単位作業における、必要な機械や判断基準、注意点などといった記載内容を選定していきます。この作業も重要事項の選定漏れがないよう気をつけましょう。
③ 構成案の作成、目次や記載順の決定
手順書の構成案を作成し、目次や記載順などといったフレームワークを決めていきます。記載順は時系列に沿ったものにするのが一般的です。
④ 手順書の文章作成
初めに決定した単位作業とその記載内容を、構成案に沿って文章にしていきます。この文章は専門性の高い難解なものにはせず、端的でわかりやすい内容を心がけましょう。
⑤ 校正作業
出来上がった手順書の校正を行い、ミスがあった場合には修正を行います。
⑥ 手順書を試導入、必要に応じて修正
まずは部署を限定するなどして手順書をスモールスタートさせ、その結果に応じて修正を行います。
⑦ 本格的に手順書を導入、運用しながら必要に応じて編集を続行
試導入による課題が解決できたら、本格的に会社全体へ手順書を導入します。その後は、必要に応じた修正や削除、追加など、運用を続けていきます。

手順書を正確に、そしてスムーズに作成できるかどうかは、「単位作業の洗い出し」や「記載内容の選定」といった事前準備の精度に左右されます。単位作業やその手順、記載すべき注意事項などに抜けや間違いがないよう、入念な準備を行いましょう。
手順書完成後は、試導入を行いながら運用を開始し、必要に応じて編集を重ねることで、より実用的な価値ある手順書が出来上がっていきます。

わかりやすい手順書にするための5つのポイント

1. 読み手を意識した表現を

手順書には、読み手を意識した表現が求められます。専門用語ばかりを連ねた手順書は、実際に利用する従業員にとってわかりにくく、いずれ活用されなくなってしまいます。活用されなければ、手順書導入の意味がありません。
手順書作成においては、「知識がなくてもわかる内容」「明確な記述」を心がけ、言葉のチョイスや誤解を生むような表現に注意しましょう。また一文は短く、できるだけ端的にしましょう。
ベテランの従業員だけでなく、新人の従業員でも理解できる手順書にすることが大切です。

2. 全体フロー図で作業の理解を深める

手順書に沿って単位作業を行う場合に、その作業が何のために行われてどの工程に属しているのか知っておくことは、作業への理解を深めるために大切です。そしてそのためには全体フロー図を作成する必要がありますが、これは本来マニュアルに記載されるべき内容にあたります。
マニュアルによる全体フロー図が用意されている場合はそれを活用し、マニュアルとリンクしやすいような手順書作成を心がけましょう。
また、マニュアルが用意されていない場合には、参考資料として手順書に簡単な全体フロー図を追加しておくのもひとつでしょう。

3. テンプレートを活用

手順書は、何も一から作成しなければならないわけではありません。必要に応じて既存テンプレートを用いれば、効率的に実用性の高い手順書が作成できます。
手順書のテンプレートはネット上に多数置かれており、またナレッジ共有サービスから入手することも可能です。自社のシステムや従業員層に合ったテンプレートをうまく活用しましょう。

4. セルフチェック項目で流し読みを防止

ただ文章が書かれているだけの手順書は、その内容をつい読み流してしまうものです。そこで、セルフチェック式の手順書を導入すれば、手順書の内容に対する従業員の理解や実践を徹底することができます。セルフチェック項目を追うことで、従業員はひとつひとつの手順や注意点をより注意深く確認することができるためです。
作業の正確性を保つためにも、セルフチェックは有効でしょう。

5. 導入後の運用でより良い手順書に

手順書は、作成・導入すればそれでおしまいではありません。その後の運用こそが、手順書導入の成功を左右する鍵になります。
手順書を導入したら、従業員による活用率や使い心地、それによる作業の変化などといったデータを調査し、その結果を手順書に反映させていきましょう。内容の変更や追加、削除を随時行なうことで、より実用的な手順書を目指せます。

まとめ

手順書の作り方について、手順書の目的やマニュアルとの違いを交えてご説明しました。
手順書は、生き残り競争が激しい現代企業にとって、有益な経営手段のひとつです。また、ひとつの企業に長く勤めた昔とは違い、現代は人材の流動性が高いため、ノウハウの継承という点においても、手順書は役立つでしょう。
未だ手順書やマニュアルを活用していない企業においては、手順書をはじめとしたノウハウの形式化および書式化が急がれます。

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