新人教育の教え方のステップ・ポイント・効果的な方法等を解説

新人教育は、企業の重要な使命のひとつです。優れた社員を育てることは、社員自身のスキルアップにも、企業利益にも繋がります。

しかし、近年実施されている新人教育は、従来のやり方と同じではありません。近年の新人教育は、新入社員に寄り添うことを重視しており、それが結果として新人教育を効率化させています。

そこで今回は、新人教育の目的を再認識するとともに、新人教育の効果的な方法を失敗例を交えてご紹介しましょう。

目次

新人教育の目的

まずは、新人教育の目的を確認しておきましょう。ここでは4つの目的を挙げていきます。

目的1 社会人基礎力を身に付ける

新人教育の基本の目的として、社会人基礎力の習得が挙げられます。
社会人基礎力とは、経済産業省から提唱されている人生100年時代において重要視される能力です。社会人基礎力は、以下の3つの能力と、それから派生する12の能力要素に、新たな3つの視点を加えたものから成り立ちます。

3つの能力と12の能力要素

考え抜く力(シンキング) ・課題発見力

・計画力

・創造力

チームで働く力(チームワーク) ・発信力

・傾聴力

・柔軟性

・状況把握力

・規律性

・ストレスコントロール力

前に踏み出す力(アクション) ・主体性

・働きかけ力

・実行力

新たな3つの視点
・何を学ぶか
・どのように学ぶか
・どう活躍するか

社会人基礎力は、あらゆる業務の基礎となる力です。企業における新人教育では、社会人基礎力を身に付けさせ、社会人としての行動や考え方の土台作りを目指します。

目的2 業務遂行に必要な知識やスキルを身に付ける

業務の遂行に必要な知識やスキルを身に付けさせることも、新人教育の大きな目的です。
新人教育では、組織における具体的な業務について、業務の進め方や目的などを教え、それを実務を通してスキルとして習得させていきます。

これにより、新入社員は仕事を覚え、自身で業務を遂行する力を身に付け、主体的に行動できるようになります。

目的3 企業理念や事業内容、社内ルールの把握

新人教育では、実務だけでなく、企業の理念やルールを身に付けさせることも大切です。
企業理念や事業内容、社内ルールなどを把握していなければ、企業の一員として同じ方向を向いて成長していくことが難しくなります。
その企業の社員であるという自覚を持たせ、組織としての団結力を向上させるためにも、新入社員を含めた全社員による企業理念やルールの把握は必須でしょう。

目的4 人間関係の構築

社内での人間関係は、業務効率や組織力に直結します。よって新人教育は、研修を通して人間関係の構築を促すことも目的としています。

OJT研修で上司や先輩社員に仕事を教えてもらったり、集団研修で同期社員との交流を深めたりすることで、人間関係は築かれていきます。新人教育で築かれた人間関係は、新人教育後の業務や会社生活を円滑で充実したものにするでしょう。

新入社員への教え方とスキル

新人教育は誰にでも簡単に出来るものではありません。新人教育のスキルが不足したまま教育を続けても、期待する効果が得られないでしょう。しかし実際には、ただやり方を伝えたり、マニュアルを提示して必要な情報を与えたりするだけで新人教育を終わらせてしまう会社も存在するのです。

教え方のスキルを身につければ、新人教育をより効果的かつ効率の良いものに変えられます。教え方のスキルを養うために、「新人教育の仕方」を社員に教える機会を設けるべきでしょう。

具体的に教育担当者が学ぶべき内容は下記の点です。

・新人教育を進める具体的なステップ
・新人教育において理解を深めるために必要なこと
・人の集中力が持続する時間
・相手の反応に合わせた次のステップの判断の仕方

また、教育を受ける側も教育担当者のことを見ています。人として、社会人として、尊敬できない・信用できないと感じた教育担当者の意見は響きにくくなるでしょう。教育担当者も新入社員から見られているという自覚を持たなくてはいけません。

新人教育の失敗例

新人教育によくある失敗例をご紹介します。このような教育方法では、新入社員に十分な知識やスキルを身に付けさせることができず、また新入社員が不安や不満を覚え離職してしまう可能性もあります。
新人教育がうまくいかない場合には、以下の例に当てはまる点がないか確認してみましょう。

失敗例1 仕事を丸投げし、手順や目的をきちんと伝えない

「見て覚えて」「わからないことが出てきたら聞いて」など、実務や学習を新入社員に丸投げしてしまうやり方は、教育とは言えません。新人教育では、業務の手順や目的をきちんと伝え、質問や不明点の有無を随時確認していくことが大切です。

失敗例2 専門用語ばかりを使う

新人教育で、難しい専門用語ばかりを使用していませんか?
難しい言葉ばかりを使用していては、新入社員は内容を理解しにくくなります。職種によっては専門用語が必要になる場面もありますが、その場合は適宜解説を入れるなどし、初心者でもわかりやすい教育を心がけましょう。

失敗例3 環境(心理的安全性)が整っていない

「すぐに怒鳴る上司がいる」「組織の雰囲気が悪い」「嫌がらせを受けている人がいる」など、心理的安全性が整っていない環境では、新人教育はうまくいきません。
安心できない環境では、新人教育後にも100%のパフォーマンスを発揮することは難しいでしょう。
劣悪な職場環境は、新人社員にも既存社員にも悪影響を与えます。

失敗例4 新入社員のビジョンを理解せず、一方的に仕事を与える

組織の意向だけで新入社員に仕事を与えることは、新人教育として好ましくありません。新入社員本人のビジョンや希望を理解したうえで、仕事を与えることが大切です。それが希望した仕事ではなかったとしても、自身のビジョンを上司や指導担当者に理解してもらえたと感じれば、新入社員のモチベーションは保たれるでしょう。
新入社員のビジョンと組織の意向、どちらも踏まえて仕事を与えることで、社員と組織の方向性は定まっていきます。

失敗例5 失敗した新入社員を否定する

「君はできない人だね」「またミスをしたの?」と、失敗に際して新入社員を否定してはいませんか。
失敗した新入社員を否定する言葉は、失敗の改善には役立ちません。それどころか、新入社員のモチベーションを下げ、心理的安全性も損ねてしまいます。
新入社員が失敗した場合には、失敗の原因を一緒に追求し改善策を練ることで、失敗の改善を期待できます。

新人教育に長けている会社が行っている教え方のステップ

次に新人教育に長けている会社が行っている教え方のステップを5つに分けて説明しましょう。この考え方は教育の場に限らず部下に指示を出す時にも活用出来ます。

STEP1 業務の全体像について説明する

ほとんどの企業では、一部の業務を新入社員に教えて、徐々に担当可能な業務を増やしていくという教育方法をとります。急に業務全体を任せることはまずないでしょう。通常は比較的取り掛かりやすく、難易度が低い業務が新入社員に任されます。

しかし、このような状況で十分な説明がなければ新入社員は担当した業務を「ただの作業」「雑用」と感じやすく、業務の全体像が掴めなくなってしまうのです。新入社員のモチベーションが下がりやすいだけでなく、理解不足が大きなトラブルにつながる恐れもあります。

そのため、新人教育をする時には最初に業務の全体像を把握させ、自分が担当する業務が業務全体にどのような影響を与えるのか、どのような役割を持っているのかを理解してもらいましょう。

STEP2 実際に業務に取り組む姿を見せる

どんなに優れたマニュアルを使用して文章や口頭で丁寧な説明をしても、実践を見て得られる情報には敵いません。人間は経験のないことについて学んだところで情報が整理出来ないのです。業務の具体的なイメージが湧かないまま教育を進めても、新入社員にとってはよく分からなくなってしまうでしょう。

教育の過程のなるべく早い段階で、実際に教育担当者が業務に取り組んでいる姿を見せてください。事前に業務の全体像を伝えておけば、その業務についてより深く理解出来ます。

STEP3 業務内容を詳しく説明する

「STEP1 業務の全体像を把握させる」「STEP2 実際に業務に取り組んでいる姿を見せる」、この2ステップを終えた後に業務内容の詳しい説明に入ります。

マニュアルなどを使えばより正確に情報が伝えられ、伝達漏れや教育担当者の力量で教育内容が変わってしまう事態を防げます。

また、新入社員から質問があったことは、随時マニュアルに追記していくなど、より分かりやすいマニュアルに仕上げていくといいでしょう。活用できるマニュアルであれば、新入社員が自分でマニュアルを見ながら確認や復習をすることに有効活用してくれます。

STEP4 本人に実践させる

教育は実践なしで終わらせてはいけません。実際にやってみて疑問点が出てきたり、不足した知識が明らかになったりするためです。一通り説明を終えた後は、必ず本人に業務を実践させてください。

可能であれば教育から時間をおかずに実践まで進め、より理解を深めさせると良いでしょう。ただし、この際には必ず教育担当者が見守り、必要ならサポートを行います。

STEP5 実践に対してのフィードバック

初めから完璧に業務をこなせる新人はいません。もし取り組みが合格点であったとしても注意するべき点を伝えてより業務の質を高めていきましょう。この際によくできたポイントについてもしっかりとした説明をしてください。

つまりフィードバックにはポジティブな指摘とネガティブな指摘の両方が必要だということです。具体的にその割合は「3:1」が理想だと言われています。

また新人に完璧を求めすぎてはいけません。相手の立場に立ってフィードバックができるような話し方を意識しましょう。具体的には「〇〇部分が理解できていないね」ではなく「〇〇部分は多くの人が理解に時間がかかる点だから」という前置きを置いた上で改善点を指摘するなどの方法で行ってください。

新人教育が上手い上司が実践している教え方のポイント

新人教育が上手い上司は次のような点を重要視して教育を進めています。これから新人教育を担当するという方はぜひ参考にしてください。

ポイント1 業務に関する知識がない人にも伝わる言葉を使う

新人教育の失敗例でお伝えしたように、業務に関する知識が不足している新人に対して専門用語を使うのは良くありません。新人教育はなるべく相手に伝わりやすい言葉を使って話を進めましょう。

どうしても専門用語を使わなくてはいけない場合・専門用語を覚えてもらいたい場合には、専門用語について丁寧な説明が必要です。覚えてもらうべき専門用語が多い時には、専門用語をまとめた資料を用意してください。

ポイント2 相手の性格や経験に合わせて教育内容を柔軟に変えていく

教育は自分が主役の場ではありません。自分の好みの教育を進めるのではなく、教育を受ける相手に合わせて教育方法を臨機応変に変えていきましょう。

例えば十分な知識を得てからでなければ実践をするのが不安に感じてしまう人もいれば、作業をしながらの方が知識が入りやすくなる人もいるのです。

先ほど紹介したステップは相手に合わせて順番を変えたり、各ステップのボリュームを変えたりするなどの工夫をしてください。

ポイント3 相手が質問しやすい雰囲気を作る

完璧な新人教育を行っても教育を受ける人によって生まれる疑問は変わります。新人教育は質問を受け付けてより業務への理解を深めてもらうことが大切なのです。

そのため、新人教育中は定期的に質問の時間を設けるなど、いつでも質問しやすい雰囲気を作る努力をしてください。たとえ似たような質問が繰り返されたとしても、悪い態度をとってはいけません。同じ質問が出てくるということは相手の理解が不足していると考えましょう。

ポイント4 自分で考えさせる機会を設ける

受け身になる新人教育では教育を受ける側に考える機会がありません。自分で考えながら教育を受けるには、先ほど説明した5ステップの中でも「STEP2 実際に業務に取り組む姿を見せる」「STEP4 本人に実践させる」ことが重要です。

可能ならアウトプットの場を用意するために、教育を受けたもの同士で教え合うようなタイミングを設けるのも良いでしょう。

ポイント5 「教えてあげている」という考え方をしない

新入社員に仕事を教えるのは教育担当者の仕事ですが、「教えてあげている」という意識を持っている方は少なくありません。そのような考えは態度に表れ、質問しにくい雰囲気になったり、偉そうな印象を与えてしまったりするでしょう。

また、教育担当者側は「時間を割いてやっている」という不満を感じやすくなります。そもそも教育担当者は教育をすることが仕事であることを忘れないようにしてください。

新人教育にストレスを感じるという方は、意識せずにそのような考え方をしている可能性について考えてみましょう。

新人教育の効果的な方法

新人教育に効果的な方法としては、「OJT」「Off-JT」「e-ラーニング」「マニュアル」の4つが挙げられます。教育内容や目的によってこれらを使い分けたり併用したりすれば、それぞれの教育方法のデメリットをフォローでき、新人教育はより効果的で効率的に進められます。

方法1 OJT

OJTとは、「On-the-Job Training」の略で、現場での実務を通して仕事の知識やスキルを身に付ける教育方法を指します。

OJTのメリット
・現場での実務教育のため、知識とスキルが身に付きやすい(即戦力になる)
・生じた疑問をその場で解決しやすい
・教える側の習熟度も上がる
・場所や時間の確保が不要
OJTのデメリット
・組織理念やルールを学びづらい
・教育担当者によって教育の質が変わる

方法2 Off-JT(集合研修など)

現場を離れ、講師による研修を受けたり、セミナーに参加したりする方法がOff-JT(Off-The-Job Training)です。新人研修やフォローアップ研修、ロープレセミナーなどテーマごとに実施され、主に複数人で受講します。

Off-JTは定期的に行うことで、モチベーションアップや仲間意識の向上を図ることができ、座学や実践トレーニングに向いています。

Off-JTのメリット
・組織理念やルールなど座学知識を学びやすい
・ディスカッションやロープレが可能
・モチベーションアップ
・仲間意識が生まれる
Off-JTのデメリット
・場所や時間の確保が必要
・講師によって教育の質が変わる

方法3 e-ラーニング

e-ラーニングとは、インターネット上で受けられる教育プログラムのことです。
e-ラーニングを利用すれば、インターネットを通して学習し、知識を高めていくことができます。パソコンさえあれば、時間や場所を限定されず自分のペースで学習できるため、OJTや研修で十分に理解できなかった部分を復習し、補うことができます。

e-ラーニングのメリット
・マイペースに学習が可能
・場所や時間の制限がない
・見直しが可能
・教育の質が一定
e-ラーニングのデメリット
・疑問をその場で解決しにくい
・モチベーションを保ちにくい

方法4 マニュアル

マニュアルには企業のノウハウが詰まっており、マニュアルを読むことは業務遂行に必要な知識とスキルの習得に繋がります。よって、新人教育にはマニュアルの利用も効果的です。
効率良くマニュアルを利用するには、新人教育のための専用のマニュアルを整備すると良いでしょう。
近年ではインターネットツールを用いたマニュアル整備が一般的になりつつあるため、マニュアルによる学習もe-ラーニングと同じように、場所や時間を制限されずに進められます。教わった業務の復習としてはもちろん、予習にもマニュアル利用は効果的です。

マニュアルのメリット
・業務の全体像が掴みやすい
・具体的な業務の手順や目的がわかる
・マイペースに学習が可能
・場所や時間の制限がない
・見直しが可能
・組織理念やルールも学べる
マニュアルのデメリット
・疑問をその場で解決しにくい
・モチベーションを保ちにくい

まとめ

新人教育では、OJTやOff-JTなど複数の方法を目的によって使い分けながら、コツを押さえた指導を行うことが重要です。

また、マニュアルによる新人教育を行う場合には情報共有ツールを、e-ラーニングによる新人教育を行う場合には人材育成ツールを用いるのもひとつの方法でしょう。情報共有ツールや人材育成ツールは、新人教育以外にも多くの目的に活用でき、それは各社員のレベルアップや業務効率化に繋がります。
教育方法とそれに合ったツールをうまく活用し、より効果的な新人教育を目指しましょう。

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