マネジメント|部下の育成方法・ポイントを場面別に解説

上司による部下の育成方法は、部下の将来や業務の成果を左右します。そして、その育成方法は時代ともに変化しつつあります。現在、企業においては、一昔前のような「目で見て仕事を覚えろ」「わからなければ聞きに来い」などという育成方法では、部下の育成を十分に果たしたとはされません。
では、上司はどのように部下の育成を行えばよいのでしょうか。
そこで今回は、部下の人材育成において気をつけたいポイントについてご紹介しましょう。

目次

部下を持つうえで意識するべきポイント

まずは、上司として部下を持つうえで、常に意識しておきたいポイントを5点挙げていきましょう。

①心理的安全性の構築

よりよい部下の育成に欠かせないのが、「心理的安全性の構築」です。職場における心理的安全性とは、「上司や同僚に拒絶されたり、罰を与えられたりしないと確信を持ち、安心して自身の意見を述べられるような状態」を指します。
心理的安全性が担保されていない環境では、部下はパフォーマンスを思うように発揮できません。周りの反応に怯えて、意見を述べられないこともあるでしょう。
心理的安全性の構築を目指すため、上司はまず職場環境や自身の対応を見直す必要があります。安心して言いたいことを言える環境を整え、部下がパフォーマンスを発揮できる土台を整備しましょう。

②部下への理解を深める

部下への理解を深めることも、部下を持つ上司にとっては重要です。
上司という立場になると複数の部下を持つことになりますが、部下の性格やスキルは一人一人異なります。そのため、効率的な人材育成を目指すなら、それぞれの部下に合った育成方法を取らなければなりません。
それぞれの部下に合った育成方法を見出すためには、まず部下を理解する必要があります。「どんな性格でどんなスキルを持つのか」「どんな長所と短所があるのか」また「どの分野に興味を持っているのか」など、部下の特性を知り、その能力を発揮できる育成プランを練りましょう。

③部下の成長を目指す

部下の育成にあたっては、「部下を成長させたい」という思いを前提に置く必要があります。「担当チームの業務成績を上げて評価されたい」「上司である自分の仕事を楽にしたい」などといった自分本意の考え方では、部下の立場に立った育成や指導ができず、部下との関係性にも歪みが生じてしまうでしょう。
「部下を成長させるためには何を経験させればよいか」を常に問いながら育成を行い、ともに成長を目指す姿勢を大切にしましょう。

④コミュニケーションを取る

積極的にコミュニケーションを取るようにすることも、部下を持つうえでは重要です。信頼関係はコミュニケーションから築かれるものです。コミュニケーションが十分でない関係性の上司には、部下は意見を述べたり相談をしたりすることができず、負担や不満を抱えてしまうことになります。
ただし、現代では積極的すぎるコミュニケーションも問題になりかねません。部下の性格をよく理解し、部下が求める距離・内容でのコミュニケーションが求められます。

⑤部下の意見を尊重する

「部下だから」「自分より経験が浅いから」と、部下の意見をないがしろにすることは、部下の育成を妨げます。部下との信頼関係を築き、効果的な育成を行うためには、自分の意見を押し付けるのではなく、部下の意見を尊重することも大切です。
部下の意見に真摯に耳をすまし、それがよい内容であれば認めて取り入れること、また修正が必要な内容であれば、意見を一旦受け止めたうえで提案を行うことを意識しましょう。
意見を尊重されていると感じられれば、部下はその後の指導や提案を受け入れやすくなります。

仕事を振る際に心がけること

上司の立場につくと、部下に仕事を振る機会が増えます。部下に仕事を振る際には、仕事を丸投げするのではなく、以下のようなことを心がけましょう。

①部下の状況を把握しておく

仕事を振る際には、上司はあらかじめ部下の状況を把握しておく必要があります。
たくさんの仕事を抱えて手一杯の部下に仕事を振ってしまっては、部下の負担が増えるだけではなく、仕事の効率も落ちてしまいます。上司による仕事分配の采配は、部下のパフォーマンス発揮や仕事全体の効率を大きく左右します。
うまく仕事や育成を進めるためには、「どのくらいの仕事を抱えているのか」「新たな業務を任せられる余裕はあるか」といった部下の現状を常に把握しておき、それに応じた仕事の割り振りを行うようにしましょう。

②レベルに合った内容・期日の仕事を振る

部下には、部下のレベルに合った内容や無理のない期日の仕事を振るようにしてください。部下が経験したことのないような内容の仕事を丸投げしたり、期日に余裕のない仕事を振るようなことは、よりよい人材育成にはなりません。
現状よりもややレベルを上げた仕事を余裕のある期日で振り、フォローを交えながら進めることが、部下の成長に繋がります。

③説明を十分に行う

部下に仕事を振る際には、あらかじめ説明を十分に行う必要があります。説明をせずに、「目で見て覚えて」「わからないことがあったら聞いて」などと仕事を投げてしまうのは上司として無責任あり、育成と仕事の効率低下を引き起こします。
部下に仕事を任せる時には、仕事の目的や具体的な進め方をきちんと説明し、質問の有無を確認して、部下の疑問も解決しておきましょう。

④進捗のフォロー、声かけ

部下に仕事を振った後には、随時進捗の確認やフォローを行いましょう。部下に任せっぱなしにしていては、思いもよらないミスが発生したり、疑問を解決しないまま作業を進めて後戻りができなくなったりすることがあります。
上司側から進捗の確認やフォロー、ちょっとした声かけがあれば、部下は安心して作業を進められ、必要な時に上司を頼れるようになります。上司によるフォロー体制の徹底は、部下との信頼関係構築にも有効でしょう。

⑤仕事後にはフィードバックを

任せた仕事が完了した後には、確認して終わりではなく、部下に対してフィードバックを行いましょう。
できたことをきちんと評価しながら、「ここはこうした方が良かったのでは?」「こんな方法もある」などといったアドバイスや提案を行います。的確なフィードバックは部下の財産となり、今後のスキルアップやモチベーションアップに繋がります。

指摘をする際に心がけること

部下の仕事を管理する上司には、部下に指摘をしなければならない場面が生じます。部下への指摘は以下のようなポイントを心がけて行うことで、より効果的なものになります。

①抽象的な表現ではなく、明確な指摘を

指摘をする時だけでなく、仕事を振る時の説明でも同様ですが、指摘・説明内容は明確な表現で行いましょう。「〜な雰囲気で」「適当に」などといった抽象的な表現は、指導に向きません。具体的な数字で示したり参考資料を渡したりして、誰がやっても同じように理解できる内容で、指摘・説明を行なってください。

②指摘内容を目に見える形で残す

指摘内容や重要ポイント、コツなどは、目に見える形で残してあげると、部下の仕事に対する理解が深まります。メモや資料、メールなどに指摘ポイントを記し、残しておきましょう。
指摘内容を目に見える形で残すことで、部下は仕事を進める中で内容の見直しができ、同じ間違いや同じ質問の発生を防ぐことができます。

③頭ごなしに否定するのはNG

ミスをした部下を、頭ごなしに否定するのはやめましょう。
上司として部下のモチベーションを保ちながら指摘を行うには、まず部下の意見を聞き、どうしてミスが発生したのか知ることから始めます。そして、できている部分は褒めながら、叱るのではなく、提案やアドバイスの要領で指摘を行うことで、部下は指摘を受け入れやすくなります。
悪質なミスに対しては厳しく接することも大切です。しかし、懸命に仕事に取り組んだ中での部下のミスに対しては、理解を踏まえた指摘を行いましょう。

普段部下と接する際に心がけること

上司には、普段部下と接するにあたっても心がけるべきことがあります。普段の接し方によって信頼関係や部下に対する理解が深まれば、それを人材育成に生かすことができます。

①部下の話を聞き、関心を持つ

上司が部下に対し、一方的に話をする様子を目にすることは多いですが、これは部下との信頼関係構築や部下の育成にはあまり役立ちません。普段の接し方においては、上司は部下と対等に接し、部下の話をよく聞くことが、関係構築に結びつきます。
部下の話を聞けば、部下への関心や理解も深まるでしょう。それらを役立てることで、部下一人一人に合った育成が叶います。

②長所やできていることに目を向ける

部下のスキルには、個人差があります。中にはパフォーマンスの低い部下もいるかもしれませんが、上司は部下のミスや短所にばかり目を向けていてはいけません。部下の可能性を低下させてしまう恐れがあるためです。
上司は、普段から部下の行動をよく観察し、長所を見つける努力をしましょう。「仕事ができる」だけでなく、「対応が丁寧」「教え方が上手」「気が利く」など、部下の持つあらゆる長所を評価することは、部下の個性を伸ばしたりモチベーションを高めたりすることに有効です。

③部下の性格や能力を考慮した声かけを

人は、一人一人性格や能力が異なります。多くの部下を持っていると、人と話すのが好きな人も嫌いな人も、グループでの取り組みが得意な人も個人作業が得意な人もいるでしょう。上司には、このような部下一人一人の性格や能力を考慮した声かけが求められます。
上司は、個人の性格や能力を考慮した上で、よりよい関係の構築や職場環境の整備のためにはどのような対応をとればよいか、常に模索していく必要があります。

まとめ

人材を育成するということは、決して簡単なことではありません。特に、上司という立場では複数の部下に対する育成と業務進行が同時に求められるため、より計画的で効率的な人材育成が必要になります。
今回ご紹介した部下の育成は、手間がかかるように思われますが、長い目で見れば効率が高くリターンも大きな方法です。有能な部下を育成するためには上記のポイントを踏まえ、部下の立場に立った指導を行いましょう。

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