社員スタッフ教育の研修費用が増加|理由と対策、事例を解説

教育研修費用の実態調査は、さまざまな企業の教育研修に関わる費用を調べることで今後の対策を検討するために、産労総合研究所にて1963年より原則として毎年実施されています。

その対象は産労総合研究所の会員である企業から任意に2,964社が抽出され、アンケート調査で得た内容を資料にまとめているのです。

この記事では、最新のデータである2020年度(第44回)の「教育研修費用の実態調査」結果を参考に、今後教育研修費が増加傾向になると言われている理由を説明しましょう。

自社の教育研修費について考えているのなら、ぜひ参考にしてください。

目次

教育研修費用総額と従業員1人当たりの教育研修費用

2020年度の教育研修費用の実態調査で分かった教育研修費の総額の予算は7,370万円、従業員1人当たりの計算では39,860円になります。

このデータを前年度の実績と比べると、従業員1人当たりに必要な教育研修費の予算は1,021円も上昇しているのです。

パーセンテージにすると110%程度の増加率になり、その増加率の高さが感じられると思います。

教育研修予算の増減状況と今後の方向性

2019年〜2020年では教育研修費の増加が認められたものの、今後1〜3年の教育研修費の見込みは多くの企業で減少が見込まれています。

新型コロナウイルスによる影響を受けて、多くの企業が雇用に慎重になっているかが分かるでしょう。

しかし、このような状況は一時的なものであり、長い目で見た教育研修費用は増加すると考えられます。

コロナ後の社会では落ち込んだ景気も回復し、同時に一度減少した教育研修費用も再度上昇すると言われているのです。

今後、教育研修費用が増加傾向になる理由

長い目で見れば教育研修費用は増加傾向にあると言われています。その理由について説明しましょう。

理由1 業務に高い付加価値が求められるようになる

業務の効率化が優先されている現在では、今後誰でも簡単に行えるような繰り返しの定型作業が機械化されたり、人件費の安い国に委託される可能性があります。

そのためこれからの人材が行うべき業務は、マニュアル通りに行えば出来るスタイルの業務ではなく、機械による作業や外部委託が難しいような高付加価値の業務です。

人材の教育や研修にも、ただマニュアルを閲覧させて終わる簡単なものではなく、自ら考え提案・行動が出来るような人材を育てられる教育が求められ、必然的に教育研修費が増加することが予想されます。

理由2 外国人雇用・企業の海外進出が進む

新型コロナウイルスの影響を受け、現在は海外進出・外国人雇用が積極的に行われているとは言えませんが、世界の情勢が元通りになれば、この流れは以前通り加熱するでしょう。

グローバル化された企業では、さまざまな国の社員の持つ文化の違い、言葉の問題などを乗り越えなくてはいけません。相互理解を深めるためには、今まで以上に丁寧な内容の教育や研修と、より多くの時間が必要となります。

理由3 組織全体の年齢差が開く

年金の支給開始年齢が引き上げられたことにより、多くの企業で定年延長の動きが進んでおり、企業では必然的に社員の年齢の差がどんどん広がっています。

例えば定年前の65歳の社員と高卒採用の18歳の社員の歳の差は47歳もあり、半世紀違う時代を生きている社員たちをマネジメントしなくてはいけないということです。

知識不足の社員にはベテランの知識を効率良く伝えなくてはいけませんし、IT関係を苦手と感じている年配の社員にも社内のシステムを使いこなせるようになってもらう必要があります。

つまり、今まで以上に社員のマネジメントが困難な状況になり、管理職やリーダークラスの社員へのマネジメント教育も欠かせなくなると考えられるでしょう。

1人当たりの教育研修費が高い企業ランキング

教育研修費は企業によって大きく変わります。ここからは教育研修費が高いことで知られている企業のランキングのトップ5(日経WOMANキャリア「人を活かす会社」調査ランキング・社員一人あたり研修費(2015年調査より))を紹介しましょう。

ランキングに記載されている金額は社員1人当たりの教育研修費になりますので、自社の教育研修費と比べてみてください。

【1位:58万4,905円】DMG森精機

工作機械の総合メーカーであるDMG森精機は、世界の42ヶ国に156拠点を持つグローバルな活動をしている企業です。

売上高の1%を社員教育に利用するほど人材育成に力を入れており、社員の技術と能力を高めることを目的として「DMG森精機アカデミー」を設立しました。

DMG森精機で行われている具体的な教育内容は下記のようなものです。

・TOEIC対策
・オンラインによる工作機械の教育制度
・最新の加工技術や業界のトレンドを学べる公開セミナー
・役職ごとに行われる階層別研修

【2位:44万6,081円】野村総合研究所

証券業・保険業・製造業・コンサルティング業・流通業を行っている野村総合研究所(通称NRI)は1965年設立の大手企業です。1

5ヶ国に41拠点を持ち、グローバルな人材教育を行っているのです。

また、人材育成だけでなく女性の活躍推進に積極的であることも野村総合研究所の大きな特徴だと言えるでしょう。

野村総合研究所の具体的な教育研修の内容は下記のようなものです。

・グローバル人材育成プログラム(海外短期研修・派遣留学)
・インストラクター制度
・キャリア基礎研修
・役職別プログラム

【3位:43万3,685円】三井物産

三井物産は化学品・インフラ・エネルギー・金属などを扱っている日本の五大商社と言われる大企業の一つです。世界中の66ヶ国に138拠点があり、グループ会社全体の社員数まで含めると4万人以上にもなる人材を抱えているのです。

三井物産には、欧米のトップビジネススクールで2年間もの期間ビジネス必要な知識を学べるという特徴的な研修があります。

その他にも、グローバルな活躍が可能な人材を育成する体制が整えられている企業だと言えるでしょう。

【4位:32万9,471円】積水化学工業

住宅建材や高機能プラスチックの製造を行っている大手樹脂加工メーカーである積水化学工業は、大手住宅メーカー積水ハウスの母体となる企業でもあります。

2万人以上の社員を抱えている積水化学工業では、社員一人ひとりが自分自身の長所を自ら伸ばせるような教育を推進していることが特徴です。

「セキスイ変革塾」「志塾」などを設立して次世代の幹部育成研修に力を入れ、向上心の強い社員には多くのチャンスが与えられるようになっているのです。

【5位:31万8,877円】日立建機

日立建機は建築機械の製造・販売・レンタルを行っており、海外にも91社のグループ会社があるグローバルな企業です。

社員のスキルアップを応援するe-Learningシステムの他にも、実習用工場・宿泊施設・独自の実習機などが揃った研修も実施しており、高いモチベーションを維持しながら自ら積極的に学びを続けられる理想的な環境が用意されているのです。

まとめ

教育研修費用の実態調査から、今後教育研修費用が増加傾向にあると言われている理由と教育研修費の高い企業のランキングをお伝えいたしました。

新型コロナウイルスの影響を受けて数年の間は教育研修費用が減少したとしても、その後はこの流れが再度進むことは避けられません。

社会的に労働者人口が減少しているという事実も踏まえ、今後の自社の教育研修費用について考えてみましょう。

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