円安やロシアによるウクライナ侵攻などの影響を受け、物価高が続いています。また、賃金の上昇が物価高に追いついていないのが現状です。
国民の負担を緩和するため、2024年に所得税・個人住民税を一定額減らす「定額減税」が行われることになりました。
定額減税の概要、実務処理などを確認しておきましょう。
汐留社会保険労務士法人
はじめに
概要
円安やロシアによるウクライナ侵攻などの影響を受け、物価高が続いています。また、賃金の上昇が物価高に追いついていないのが現状です。
国民の負担を緩和するため、2024年に所得税・個人住民税を一定額減らす「定額減税」が行われることになりました。
定額減税の概要、実務処理などを確認しておきましょう。
対象者
給与計算業務担当者
1概要(給付含む)
2定額減税の対象者、実際の減税額
・居住者:国内に住所を有する個人、又は現在まで引き続き1年以上居所を有する個人
・令和6年分の所得税に係る合計所得金額が1,805万円以下である(年収2,000万円以下)
※注意※定額減税の対象者は上記になりますが、後述の月次減税の対応は、甲欄適用者で年収が2,000万を超える見込みがある方も必要。超えた場合は確定申告にて対応が必要。
・令和6年1月1日時点で国内に居住している
・令和5年の合計所得金額が1,805万円以下である
所得税 |
住民税 |
本人3万円 +同一生計配偶者又は扶養親族×3万円 |
本人1万円 +同一生計配偶者又は扶養親族×1万円 |
※非居住者(所得税)、国外居住者(住民税)は対象となりません。
【減税額の計算例】
家族構成:本人、配偶者、子1名
所得税:3万円 + 2名×3万円(配偶者、子) = 9万円
住民税:1万円 + 2名×1万円(配偶者、子) = 3万円
所得税9万円+住民税3万円=合計12万円の減税
3定額減税に関する3つの実務処理と流れ
詳細:定額減税のしかた
①月次減税事務:令和6年6月1⽇以後に⽀払う給与等(賞与を含む)に対する源泉徴収税額からその時点の定額減税額を控除する事務
②住民税対応:定額減税に基づいて市区町村にて決定された住民税額を、令和6年6月以降の給与に反映する事務
③年調減税事務:年末調整の際、年末調整時点の定額減税額に基づき精算を⾏う事務
●2024/1~2024/5(月次減税事務)
・扶養親族の確認や、減税額の計算など
●2024/6(月次減税事務・住民税対応)
・月次給与等において減税対応の実施
●2024/7以降(月次減税事務)
・6月給与等で控除しきれなかった定額減税額を、全額控除するまで順次反映
●2024/11、12(年調減税事務)
・実際に行った定額減税に基づき、源泉所得税の精算
4月次減税事務
詳細:定額減税のしかた
①控除対象者の確認
令和6年6月1日(基準日)現在、
・給与の支払者のもとで勤務している
・給与等の源泉徴収において源泉徴収税額表の甲欄が適用される居住者
②各人別控除事績簿の作成(作成任意)
・システムにて対応されると想定
③月次減税額の計算
・同一生計配偶者及び扶養親族の数の確認 (ステップ5参照)
⇒扶養控除申告書に変更がある場合
最初の月次減税事務開始までに控除対象者から「源泉徴収に係る定額減税の為の申告書」の提出を受け、計算人数に含める。
0024002-044_01.pdf (nta.go.jp)
・「本⼈30,000円」と「同一生計配偶者と扶養親族1⼈につき30,000円」との合計額(=月次減税額)を求める
④給与等支払時の控除
【所得税】
令和6年6月1日以後最初に支払を受ける給与・賞与の源泉徴収税額から月次減税額を控除します。控除しきれない部分の金額は、以後令和6年中に支払う給与等に対する源泉徴収税額から順次控除します。
⑤控除後の事務
・給与明細への控除額の表示(必須)
・手取り額の増減に関する従業員への周知
・源泉所得税納付書の記載と納付等
5月次減税事務~同一生計配偶者及び扶養親族の数の確認
定額減税の対象になる扶養親族は、給与計算における扶養親族と対象が異なります。
月次減税開始前の「同一生計配偶者」と「扶養親族」に関する情報収集が重要です。
「同一生計配偶者」とは?
控除対象者と生計を一にする配偶者(⻘⾊事業専従者等を除く。)のうち、合計所得⾦額が48万円以下の⼈(居住者に限る!)
➡次のいずれかに該当
・「配偶者控除等申告書」に記載された控除対象配偶者
・年調減税額の計算に含める配偶者として「年末調整に係る定額減税のための申告書」に記載された配偶者
Point
従業員本人の所得が900万円(年収1,095万)を超える場合であっても、定額減税では従業員の同一生計配偶者(所得が48万円以下の配偶者)を対象者に含むことに注意が必要。
「扶養親族とは︖」
所得の見積額が48万円(年収103万円)以下である所得税法上の控除対象扶養親族及び16歳未満の扶養親族(ただし居住者に限る!)
Point
16歳未満の扶養親族については年末調整の扶養控除の対象外ですが、定額減税では令和6年度の所得の見積額が48万円(年収103万円)以下であれば対象となる点に注意が必要。
6住民税対応
詳細:定額減税のしかた
・特別徴収決定通知に従って控除(従前処理と変化なし)
・6月分は0円、7月以降の定額減税後の税額を11カ月割で徴収
(端数は初月で調整される)
※ただし定額減税の対象者ではない従業員に関しては、特別徴収は令和6年6月から令和7年5月にかけて行われる。全従業員の6月の特別徴収額が0円とは限らないことにも注意が必要。
※そもそも住民税の定額減税とは???
・・・年間の「所得割ー定額減税額+均等割+森林環境税」を算出し、11で割った金額を令和6年7月給与から令和7年5月給与にかけて特別徴収します。
7年調減税事務
・「年調減税事務」の実務詳細は、2024/9ごろ国税庁ホームページで各種情報を掲載予定
(令和6年3月4日時点)
8各システムごとの給与計算対応に関して
令和6年5月10日時点
システム |
改修日程 |
|||
社労夢 |
未定 |
【社労夢全国会✖️MKsystem共催】 ※4/26(金)14:00~15:30 |
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OBC |
2024/5 |
<令和6年:定額減税>『給与奉行クラウド』の改正対応&運用まるわかり説明会 ※4/26(金)13:00~14:30 |
||
freee |
2024/5 |
|||
ジョブカン |
2024/5 |
|||
MF |
2024/5 |
|||
OFS |
2024/5 |
※2024年5月10日(金) 10時00分~11時00分 |
9(退職者)源泉徴収票への記載
【年末調整を行わずに退職した場合】
転職先の企業では、月次減税事務を行わず年調減税のみで対応すればよいことになっているため、退職者に渡す源泉徴収票に定額減税に関する情報を記載する必要はない。
源泉徴収税額欄に、実際に源泉徴収した額を記載。
10QA全体、抜粋
11【令和6年8月修正】QA抜粋
12その他
令和6年3月下旬から令和6年5月までの間、定額減税の概要や源泉徴収事務について、給与支払者向けの説明会を税務署等において開催するとの事。(参加費用無料)
給与支払者向け定額減税説明会|国税庁 (nta.go.jp)
●定額減税を受けることができる方
●定額減税額
●実施方法
●留意事項
●所得税に関する情報・用語の説明(二次元コードからリンク先を参照)
●個人住民税に関する情報 (二次元コードからリンク先を参照)
●給付金等に関する情報(二次元コードからリンク先を参照)
●STEP1 定額減税の対象・定額減税額の確認
●STEP2 必要な手続の確認
●扶養控除等申告書の記載のしかた(二次元コードからリンク先を参照)
●源泉徴収に係る定額減税のための申告書の記載のしかた(二次元コードからリンク先を参照)